2010年5月31日月曜日

独立行政法人

先日、所用で大阪の国立循環器病センターに行きました。臨床に、研究に、大活躍している先生方が大勢いる、大した病院です。
国立循環器病センターは、ナショナルセンターだったわけですが、独立行政法人化して、名前が変わったんですね。知りませんでした。

国立循環器病センター→独立行政法人国立循環器病研究センター

になったそうです。

へーっとおもって、他のナショナルセンターをちょっと見てみると、やっぱり変わっているんですね。

国立がんセンター→独立行政法人国立がん研究センター

国立成育医療センター→独立行政法人国立成育医療研究センター

国立国際医療センター→独立行政法人国立国際医療研究センター

国立精神・神経センター→独立行政法人国立精神・神経医療研究センター

国立長寿医療センター→独立行政法人国立長寿医療研究センター


研究が大事みたいです。

国立病院機構とは別組織なんですね。

2010年5月30日日曜日

剣状突起

さて、久しぶりの更新です。

心肺蘇生教育の世界に、新たに興味を持ち、新規参入されてくる方がそれなりにいらっしゃいます。有り難いことです。ベーシックで当たり前のようですが、うまく答えることができない質問を受けることが時々あります。

例えば、胸骨圧迫の手の位置についての、非常にベーシックな質問。

AHAのプロバイダーマニュアルには、乳児のCPRでは「剣状突起は押してはならない」と明記されていますが、成人のCPRでは、明記はされていません。この違いは何なのでしょうか。

うーん。当たり前のような質問ですが、考えだすと、結構深いです。

まず成人について。
乳頭間の正しい位置取りをすれば剣状突起を押すことは有り得ませんが、なぜ剣状突起を押してはいけないのかという問いに対しては、CoSTR、ガイドライン、プロバイダーマニュアルには記載がありません。そもそも、CoSTRには、「成人CPRにて、手をおく位置についての満足できるエビデンスはない」とあります。現在、推奨されている乳頭間の手の位置も明確なエビデンスのないコンセンサスと言えます。極論を言えば、現在の推奨の手の位置が、剣状突起近くの圧迫よりも明らかに優れているというエビデンスはないわけです。
現在の推奨の手の位置と、剣状突起近くの手の位置で、腹部臓器損傷の頻度が本当に異なるのか、分かりません。
AHAを離れれば、Case report等でCPRによる腹部臓器損傷の報告もありますので、避けた方が良い気がしますので、なんとなくそのように指導してきましたが、いざ客観的に調べると、意外とクリアではありません。

乳児については、上記のようにBLSプロバイダーマニュアルには「剣状突起は押してはならない」と明記されています。理由については記載がありません。成人より乳児のほうが臓器損傷が生じ易い印象がありますが、そんな報告もあるのでしょうか。乳児には記載あり、成人には記載がないのはそのためなのでしょうか。
CoSTRには、「小児では胸骨の下3 分の1 の圧迫が胸骨中央に比べ高い血圧を生み出せる」とも書いてあります。
この文献が出典みたいですが、小児と乳児が対象のようです。乳児の数は僅かですが、この文献が根拠のひとつとして乳児の胸骨圧迫の位置が”乳頭間線直下”というやや下の推奨になっているのでしょうか?。(ちなみに、小児が成人と同様の手の位置なのは、シンプルにすることで、教育的効果を上げるためだからでしょうか?)乳児は成人よりもやや下を圧迫することになりますから、その分剣状突起に近くなり、その結果、「剣状突起は押してはならない」の記載が敢えて書かれているのでしょうか。うーん、分からないことだらけです。

恐らくは、これまでも様々なところで議論されていることとは思います。
良い答えをご存知の方は御教授下さい。

2010年5月21日金曜日

Cardiac Contractility Modulation

東京女子医大循環器内科の松田直樹先生のCRTに関するご講演を拝聴しました。
心不全患者治療に関する新たな植え込み型デバイスとして、Cardiac Contractility Modulationなるものを御紹介頂きました。Cardiac Contractility Modulationとは、左室心筋の絶対不応期に強い電気刺激を加えることにより心収縮力が増強される現象だそうです。機序としては、心筋細胞筋小胞体からのカルシウム放出を増加させるためのようですが、まだ分かっていない面も少なくないようです。
へえ、初めて知りました。
すでに臨床応用されており、今後更なる発展、普及が望まれます。
強い電気刺激が必要であり、電池消耗が激しいので定期的な頻回充電が必要だそうで。その度にデバイスが植え込まれていることを実感してしまうし、依存感を感じそうですね。仕方ないけど。

Supersexy CPR

とある方から、こんなサイトを御紹介頂きました。

http://supersexycpr.com/index.html

WATCHをクリックすると動画が見られます。
high quality CPRじゃないなーと思いながらも、ついつい見てしまいます(笑)。

2010年5月18日火曜日

エピ

2010年5月15日土曜日

I think X,because Y. For example,Z. 続き

先の記事で、

I think X,because Y. For example,Z.

を推奨しましたが、それではBLSの実技試験が不合格だった場合はどうしましょ。

「不合格です!チェックリストが埋まりませんでした!・・・・・」

はあまりにきついでしょうか(笑)。日本人としては。。。。

その辺は、臨機応変に対処しましょう。

意図的な練習

ドクター・ヴァンスの 英語で考えるスピーキング

先の記事でのこの本の紹介ついでに、この本で気に入った一節の御紹介。

「人を卓越させてくれるタイプの勤勉さとはいったい何でしょうか?それは、「意図的な練習」です。「意図的な練習」というのは、毎日単純にたくさんのゴルフボールを打つという勤勉さとは異なります。それは、8番アイアンを使って300回打ち、その80%は、ピンの6メートル以内に寄せるというはっきりとした目的を持って、各ボールを打った結果を常に考察、調整しながら、毎日数時間練習するというものです。つまり、一般論として定義すれば、「成績の向上を明確に意図し、個々の結果についてのフィードバックを自分に与えながら、自分の力量を超えた目標に到達しようとして行う相当な量の反復行動」となります。」(P219)


徒に繰り返したり、積み重ねたりすることは、必ずしも勤勉とは言えないわけですね。

これも心肺蘇生教育にも活かせる概念ですね。単にBLS手技を繰り返しやらせるだけでは効果的ではないかもしれません。「意図的な練習」を心がけることが重要ですね。

I think X,because Y. For example,Z.

AHA BLS for HCPの最後の成人1人法CPRの実技試験が終わり、受講生へのフィードバックと合否の結果を伝えます。

「反応の確認、救急システムの立ち上げ、AED要請、できていましたね。気道確保も出来ていて、呼吸の確認も7秒でした。人工呼吸も2度胸が良く上がっていました。1回約1秒で、10秒以内にできていました。脈の確認も6秒でした。5秒以上10秒以内にしっかりできています。胸骨圧迫30回は17秒でできていました、、、、、、、。ということで、チェックリストは全て埋まりました。合格です!命が救えますね!」

このように、受講生とチェックリストの項目を一つ一つ確認の上、最後に結論の「合格」をお伝えするインストラクターは少なくありません。自分もかつてそうでしたが、先輩インストラクターに指摘されました。

各項目のフィードバックの間、受講生は、自分の合否が分からず、大変不安になるかもしれません。ですから、実技が終わったら、

「合格です!スキルチェックシートの項目が全部埋まりました!これなら命が救えます! 反応の確認、救急システムの立ち上げ、AED要請、できていましたね。気道確保も出来ていて、呼吸の確認も7秒でした、、、、、、、」

このように結論を先にお伝えした方が、分かり易いし、受講生も安心することでしょう。

これと少々関連した事柄がこの本に出ています。

ドクター・ヴァンスの 英語で考えるスピーキング





「効果的にメッセージを伝えるための考えの構成方法は、文化によって異なります。一般的に、英語の考えの構成法が直線的につながっていくのに対して、日本語の場合は、同心円の外から内へ向かうなどと言われます。」

なるほど。例えば、こんな感じです。

日本人:A(理由)という要素があり、さらにB(理由)です。例えば、、、、。従って私はC(結論)と考えます。

アメリカ人:私はC(結論)と考えます。なぜなら、A(理由)という要素があり、更にB(理由)だからです。例えば、、、、。

アメリカ人のような表現(I think X,because Y. For example,Z.)の方が、クリアで伝わり易いわけです。
「合格です(結論)。チェックリストが埋まりました、人が救えます(理由)。反応の確認は、、、、(例)」ということになります。

この本、英語の勉強の本なのですが、上記のようなコミニュケーションスキルなどにも踏み込んでいたりと、なかなか有用な本と思います。

まあ、本日のこのブログ記事の構成自体、結論が後に来ていて、日本人的ですよね(笑)。

2010年5月12日水曜日

また幅広いQRS頻拍にアデホス

動悸で来院した高齢男性。意識、血圧は問題ありませんが、頻脈。循環器後期研修医が12誘導心電図を記録したところ、どきっ。



自他覚症状は安定しており、安定した幅広いQRS頻拍。HR200bpm程。一般的には、幅広いQRS頻拍はVTと考え対応することが安全です。この方、高血圧性心不全の既往もあるようで、そのような背景を考慮すると、、、、やっぱりVTの可能性が高いかもしれません。
ただし、以前の心臓超音波検査によると左室収縮能は良好のようです。
非循環器医なら、酸素、点滴して除細動器を用意しつつ循環器医コンサルテーションでしょう。
不幸にも、循環器医がいない状況なら、アミオダロン点滴でしょう。同期下電気的カルディオバージョンも有力な選択肢です。

以前の心電図を見たいところです。幸いありました。



洞調律時と、頻拍時の四肢誘導の極性が変わっていません。循環器医としては、上室性頻拍の可能性が高いと疑うわけです。
試しに迷走神経刺激手技としてValsalva手技を試みてもらいましたが、反応はありませんでした。
そこで、アデホス(ATP)を投与してみたところ、、、



粗動波様のものが見えました。
やはり上室由来の頻拍、心房粗動1:1伝導であったようです。アブレーションを考慮すべきでしょう。

ということで、研修医数人がいる前で、循環器後期研修医が、幅広いQRS頻拍にATPを投与しましたが、非循環器医はすべきでなく、まねしちゃいけません、これは循環器医ならではの対処であることをお伝えしました。


関連記事

http://jblog20090211.blogspot.com/2009/11/qrs.html

http://jblog20090211.blogspot.com/2009/10/qrs_11.html

2010年5月10日月曜日

カテ室のちBLSコース

先週末のBLSの日、早朝5時頃から急性心筋梗塞の緊急カテでした。徐脈、ショックの高齢男性。



2,3,aVFでST上昇しており、下壁領域の急性心筋梗塞。症候性徐脈、完全房室ブロックを合併していました。初療に携わった後期レジデントがTCP装着するもうまくペーシングできず、それにもめげずアトロピン投与、でも無効、それにもめげずドーパミン点滴!そんなことしつつカテ室に搬入。症候性徐脈の対処としては、スタンダードですね。さすがです。

経静脈ペーシングを挿入し、それでもショックなのでIABPも入れてCAG。右冠動脈閉塞で、型通りPCI施行しました。
PCI中、VFになりました。



VFの12誘導心電図は、記録できる機会は多くはないですよね。貴重な記録です(笑)。
電気的除細動を施行。すぐさま、胸骨圧迫!!言わなくても、すぐに圧迫してくれる若者は勿論AHA BLSプロバイダー!!!!!
先日のブログ同様、除細動は出来たものの、すぐには循環が戻りませんでした(PEA)。2分弱胸骨圧迫したでしょうか。カテ中ですので当然、動脈圧ラインは確保できていますから、胸骨圧迫中の動脈圧の推移は目の当たりにできます。胸骨圧迫が途絶えた時の圧の出ない状態、胸骨圧迫による圧の上昇が良く理解できます。除細動直後の胸骨圧迫の重要性をまたまた実感できました。循環器医はこんなことをたびたび経験しますので、これを周りに伝えないといけないと思いました。

この方は、2分弱のCPRを経て、自己心拍再開し、無事にPCIも終了し、経過良好です。

BLSトレーニングの重要性や、教育内容の妥当性の確認など、色々と感じた良き時間でした。
でも、寝不足のままBLS-R、BLSと1日こなし、眠かった(笑)!

2010年5月9日日曜日

循環器教授

昨日のBLS-Rに、某大学の循環器内科の教授先生が受講されました。JCS-ITCならではかもしれません? 謙虚な態度で紳士な先生でした。
担当したインストラクターは、歯科領域のコメディカルの方。緊張していたかもしれませんが、客観的には、循環器教授相手に臆すること無く、堂々としたインストラクションを展開していました。コメディカルの方の、教授先生への医学的分野に関する指導、、、一般的にはなかなか目にしない光景かもしれません。心肺蘇生教育ならではでしょうか?いずれにしても、そのインストラクターにとっては、大変自信になったことと思います。アンケート結果も良かったですし。

皆にとって

昨日はAHA BLS for HCPを開催。午前 BLS-R、午後BLSでした。コース自体も良質なもので、受講生にも大変喜ばれました。
一方で、今回は多くのインストラクター候補の方々がスタッフ参加して下さり、コース運営をよくお手伝いして頂きました。感謝申し上げます。せっかく参加頂いたので、目指せインスト!ということで、少しでも多くのことを学んで帰ってもらいたいと思っています。今回は参加インストラクターも数的に余裕があったため、手があいているインストラクターの方々が、スタッフの方々を熱心に教育してくれました。インストラクターの方々にも感謝申し上げます。

受講生、インスト、スタッフ、皆にとって、有意義な1日だったと思います。

15:2

この記事に対して、t.aさんから大変鋭い御質問を頂きました。

「救助者が二人の場合、15:2が『30:2ほど冠灌流圧を維持できない可能性がありますが、呼吸回数が多い分血液の酸素化は良好になり、トータルとしては呼吸原性心停止(小児、乳児)にはより良く働くことが期待され』るということは、救助者一人の時も15:2がよいと考えられるのでしょうか?」


呼吸原性心停止に対する救助者1人によるCPRにおいて、15:2と30:2の優劣については、明確なエビデンスはないと思っています(どなたかご存知でしたらご教授ください)。
一方で、新生児を除く各世代(乳児、小児、成人)の1人法CPRが30:2で統一されている理由は、(胸骨圧迫を増やす以外に、)教育が簡単になり、技能保持を促進するためとCoSTRには記載されています。

従って、t.a.さん御指摘のように呼吸原性心停止に対する1人CPRでは、15:2のほうが優れている可能性はあるかもしれませんが、より多くの人にCPRを行ってもらうことを目指して、シンプルに30:2としているようです。

訂正すべき点があれば御指摘の上、御指導のほど宜しくお願い申し上げます。

怒らないこと

新しい本ではないのですが、いろいろなブログ等で紹介されている本です。

怒らないこと―役立つ初期仏教法話〈1〉 (サンガ新書) (新書)



題名からして、なかなかのインパクト。”怒り”というテーマだけで1冊の本を書いてしまう、大変マニア?な本。一貫して怒ることの愚かさを説いています。日々の生活の中で、”怒り”を感じてしまうことはたびたびありますが、その度にこの本を思い出します。ですから、最近は怒りません。いつまで続くかわかりませんが(笑)。怒っている人を見ると、気の毒になってしまうようにもなりました。
自分にとっては、なかなか影響力の大きい本でした。頭にきちゃうことが多い方、御一読をお勧め致します。

2010年5月7日金曜日

とある質問 3

心停止時のCPR2人法で30:2(成人)、15:2(小児) と人工呼吸の頻度が異なっていたものが、挿管されると"6〜8秒に1回"と同一になるのは何故?

以下のように考えていますが、良い御意見有る方はご指導下さい。

高度気道確保がなされている状況下の換気回数(6-8秒に1回)は、静脈還流と酸素化(+換気)のバランスに基づいて設定されていると思われます。
高度気道確保がなされていない状況下のサイクル回数(30:2、15:2)は、冠灌流圧と酸素化(+換気)のバランスに基づいて設定されています。
従って、"30:2や15:2のサイクル"と、"高度気道確保下の換気回数" はともに循環・呼吸動態のバランスを考慮したものではありますが、微妙に異なった視点である、とも言えます。

高度な気道確保がなされている場合、
絶え間ない胸骨圧迫で、高い冠灌流圧が維持できます。
換気も6-8秒に1回行うことで、過換気による静脈還流低下を防ぎつつ、(心停止状況下における)可能な限りの酸素化が期待できる、それは成人でも、小児(乳児)でも同様、ということと思われます。
(成人でも、小児でも、)CPR中の心拍出量は正常値のほぼ25-33%(GL P29)で、肺への血流は実質上低下しており、そのため1回換気量と呼吸数が正常値より低くても適正な換気・血流比を維持でき(GL P28)、6-8秒に1回行うことでこれをまかなうことができると思われます。


ちなみに、非心停止時にも換気回数は5-6秒に1回(成人)、3-5秒に1回(小児) と異なっています。非心停止患者への挿管後の管理はBLS、ACLSコースを逸脱します。参考までにガイドライン2005(P214)には、非心停止小児に高度気道確保した後の人工呼吸は12-20回/分と記載されています。
PALSプロバイダーマニュアルの『蘇生後の管理』の記載によると、蘇生後の人工呼吸器の呼吸数の初期設定は 乳児:20-30回/分、小児:16-20回/分、思春期:8-12回/分 と年代によりやっぱり異なります。


ご指導の程宜しくお願い致します。

とある質問2

2人法CPRにおいて、小児(乳児)と成人では胸骨圧迫と人工呼吸のサイクルが異なってきます(30:2、15:2)。15:2では十分な冠灌流圧がえら得ているのだろうか。また15:2 5サイクルで役割交代との記載もあるが、その場合、冠灌流圧はどうなるのか?といった疑問が、とあるMLで提示されました。(小児2人法は15:2で行いますが、役割交代は"2分毎"とAHAは推奨しています。)

以下のように考えていますが、良い御意見有る方はご指導下さい。

高度気道確保がなされていない場合の胸骨圧迫と人工呼吸のサイクル(30:2、15:2)は、循環(冠灌流圧)と呼吸(主に酸素化)のバランスに基づいて設定されています。
明確なエビデンスは無くbestとは言えないものの、現状でbetterなバランスと考えられています(コンセンサス)。
即ち、
15:2では、30:2ほど冠灌流圧を維持できない可能性がありますが、呼吸回数が多い分血液の酸素化は良好になり、トータルとしては呼吸原性心停止(小児、乳児)にはより良く働くことが期待され、
30:2では、15:2ほど酸素化は良好にはならない可能性はあるものの、より高い冠灌流圧を維持することができ、トータルとして心原性心停止(成人)にはより良く働くことが期待される、ということです。
5サイクルでの役割交代(頻繁な交代)は疲労が緩和される分胸骨圧迫の質の維持には有利かもしれませんが、交代による胸骨圧迫の中断が生じるとすると冠灌流圧維持には不利に働きます。この状況下での冠灌流圧の維持については、救助者2人各人の技術と、2人のコンビネーション次第としか言いようがない気がします。当たり前のようなコメントになってしまいました

とある質問

あるAHAインスト系MLで出た質問です。
「いつ倒れたか不明な意識・反応のない「小児」を発見した場合、CPRでは「有効な人工呼吸」を2回行なうわけですが、もしも実は窒息だった場合、息を吹き込んでも胸が上がらず、何度も人工呼吸をするということが起こりうると思います。窒息を疑われる状況が何か見られればよいのですが、状況が全くわからない時、2回、3回と息を吹き込んでも胸が上がらない時はどうすれば良いでしょうか。」

心肺蘇生中の30:2の"2"の人工呼吸は、胸骨圧迫中断を最小限にすべく10秒未満で行うことは良く理解されていることと思います。
心肺停止の確認の際の"初めの”2(+α)回の人工呼吸についても、10秒以上かけてはいけないとAHA BLSインストラクターマニュアル「重要な手技の解説」には記載されています(これについては、プロバイダーマニュアルには明確な記載がないように思います)。
従って、いつ倒れたか不明な意識・反応(、呼吸)のない「小児(乳児)」を発見した場合、有効な人工呼吸を行う努力を2−3回行い、胸が上がっても、上がらなくても、10秒を超えないうちに次のアクション、即ち脈拍の確認に移ることでよろしいかと思います。10秒未満ですから、人工呼吸の努力も恐らく3回どまりまででしょう。
脈拍が無ければCPRです。ACLSプロバイダーに引き継ぐまで、通常のCPRです。CPR中も人工呼吸時に胸が上がらないのであれば、胸骨圧迫中断10秒未満の原則を守る範囲内で人工呼吸を複数回行い2度胸を上げる努力をします。この際、窒息を強く疑うのであれば、気道確保のたびに口の中を覗いて異物の有無を確認する、というオプションは有りかと思います。ただし、胸骨圧迫中断は10秒未満です。
脈拍があれば、人工呼吸のみということになりますが、どうしても胸が上がらず、かつ窒息を強く疑うのであれば、反応のない窒息傷病者への対処に準じて"CPR"を行っても良いと思います。

こんなふうにお答えしてみましたが、訂正すべき点があればご指導お願い致します。

2010年5月2日日曜日

最近

最近は、突然の高度房室ブロックで、TCP作動させなければほぼ心肺停止で痙攣してしまうような方や、40代なのにボロボロ3枝病変のSTEMI、ショックで搬入された方、A型急性大動脈解離で心タンポナーデ、ショックの方、などなど重症な患者さんが多く搬入されてきます。救命センター、循環器、心臓血管外科、などなど複数科で協力しながら良き治療が提供できています。
4月から入った研修医の先生方にとっては、ちょっと難しい症例でしょうが、頑張って勉強してもらいましょう。