2010年12月19日日曜日

繰り返し。。。

50代男性。
元来健康。胸痛既往なし。
朝9時頃突然胸痛が出現、冷汗あり。その後やや軽減し、鈍痛となるも症状消失せず。10:30救急外来受診。
受診時BP143/93,P86,SpO299%、バイタルサインは保たれており、身体所見では著明な異常所見なし。
対応した研修医はすぐに心電図記録。



研修医は、明らかな異常はないと判断。かつ、トロポニン定性検査陰性。その他採血異常なく、胸部レントゲンも異常なし、、、、、。胸痛の原因はよくわからず。救急外来のベッドで横になってもらいつつ経過観察。
それでも改善しないため、12時頃になり、循環器の当直に連絡がありました。「一応診てもらえますか?」

すぐに救急外来に行き、診察。まだ胸部の鈍痛が持続しているとのこと。ECGは来院時の一度しか記録していなかったのですぐに再検してみました。しかし経時変化なし。来院時同様正常範囲内の所見。しかし胸部正中の圧迫感、鈍痛、即ち虚血性胸痛に矛盾しない症状が持続しており急性冠症候群は否定できません。すぐに心臓超音波検査を施行したところ、下壁領域で壁運動が低下しているように見える部位があります。広範ではありませんが、急性心筋梗塞の可能性十分ありと判断し、すぐに冠動脈造影を施行しました。
右冠動脈#4の末梢病変でしたが、完全閉塞していました。primary PCIし、CCU帰室しました。

結局1.5時間循環器コールが遅れ、その分心筋ダメージが増えたと推測されますが、幸い、合併症なく順調に経過しています。
研修医には、心電図が正常で、心筋マーカー陰性の急性心筋梗塞もいるから、胸痛患者を目の当りにしたら諸検査が正常でもすぐに循環器医を呼びなさい、と再三指導しているのですが、何度言っても、この繰り返しです。循環器医は怖いから呼びづらい、、、との意見は以前から耳しています。この辺は当方も改善せねばいけません(苦笑)。
それ以外にも、以前ちょっと御紹介した本の一説




人々が知ったことを行動に移さない(移せない)三つの理由

『情報過多』多量の知識を1,2度学ぶより、少量の知識を何度も学んだほうがいい
『ネガティブなフィルター装置』
『フォローアップの欠如』一にも、二にも、三にも、繰り返すこと




この辺にkeyがあるのかなとも思っています。

ガイドライン的にも、胸痛患者で12誘導心電図で明らかな異常がなくとも、ACSの可能性が否定できなければ、5-10分毎に心電図を記録し経時変化をとらえること、とされています。今回は、結果的には経時変化はなかったものの、そんな対策も講じていません。そもそも、初めの12誘導心電図は救急専門医、循環器医と判断すべきと推奨されています。
毎年同じ事言っています(苦笑)。

2 件のコメント:

  1. なかなか難しい問題ですね。

    病院全体で取り組まないと行けませんね。

    また他科の先生に、検査陰性で心筋梗塞と言う概念が理解されていないのかも知れませんね。

    確かに「胸痛で検査が異常ない」と言うと、「で?俺に何をしろと言うの?」と返事をする循環器の先生もおられるので、難しいですね。

    以前の病院では、仕方ないので胸部CT(解離とか肺塞栓の除外のため)を撮って、やっぱり胸痛が続いていますとまた相談すると、勝手に造影するなと怒られたり、、、結局心筋梗塞だったのですが、、、謝れとは言いませんが、態度を改めて欲しいと思いました。

    返信削除
  2. Kim先生、有り難うございます。まさに、病院全体、、ですね。
    御指摘の循環器医、、、結構多いんですよね。。。残念ながら。うーん。すいません。

    返信削除