2010年12月19日日曜日

高度房室ブロック??

急性大動脈解離で入院した患者に、Beta遮断薬を投与、増量していたところ,心電図モニターでこんな所見が記録されました。
後期研修医が、「QRSが脱落し、高度房室ブロックを疑う所見ですから、Beta遮断薬は減量することにしました」と報告してくれました。
急性大動脈解離にはBeta遮断薬は良い適応ですが、陰性変時作用がありますから、ブロックなどの徐脈性不整脈の副作用を認めることは時々あります。




なるほど、確かに、QRSが抜けています。



さて、ホントに抜けている?? 病的??

2段目の赤い線が書いてあるところ、看護婦さんが書いてくれたようですが、ここがそのQRSが抜けているとされる部位です。
その中央付近が、やけにflatに見えます。僅かな基線の揺れもなく、やや不自然にみえる気もします。高度房室ブロックなら、P波は等間隔で出現するはずです。赤線左端やや左のQRSはしっかりP波を伴っています。次のP波は確認できますが、その次のP波は、確認できません。不自然なflatな線のみで、P波らしき上向きの波形は確認できません。これが全くもって納得できません。
不自然なflatな波形直後の上向きのふくらみ波形(赤線左側3/4付近)があります。これは、、、、T波を等間隔に辿ると、このふくらみに一致します。これは、T波の可能性が高いです。
P波とT波の位置を書いてみるとこんな感じ。




結論的には、理由は分かりませんが、中段、左から2拍目のP波の直後からごく短時間の間、何らかの原因(機器の問題)で心電図が出力されずに、不自然なflat波形となってしまい、2拍目のQRSと(T)波は確認できません。3拍目の(P)波もQRSも確認できませんが、T波は確認できます。このT波が出たところで波形出力が再開したと思われます。
患者さんの波形に異常があったわけではなく、心電図機器のトラブルの問題の可能性が高そうです。
ということで、房室ブロックが出現した可能性は極めて低く、Beta遮断薬の減量も不要と思われます。

原因はなんだろう。。。。困りますよね。

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