2010年12月29日水曜日

院内AED

Automated External Defibrillators and Survival After In-Hospital Cardiac Arrest

1ヶ月以上前の論文です。まあ、一言で言えば、院内でのAED使用の有効性は見いだせなかった、という趣旨です。心肺蘇生に携わる者にとっては、なかなかimpressiveです。
Kim先生が詳細に解説してくれています(ありがとうございます。勉強になります)。こちらをどうぞ→  

心肺蘇生教育に携わっている優秀な中堅看護師さんが、この論文を読んだらしく、院内教育でAED教えているのに、、困惑してしまいますとの御意見を最近頂きました。
院内でのAED使用は”有害である”などとネット上で過激な言葉で紹介されたりもしていましたが、それは言い過ぎでしょう。手動式除細動器よりは劣っている可能性が示唆された、くらいにしておいて欲しいものです。
この研究はRCTではありませんし、数々の限界はありますので、決定的なことは言えませんが、大きなRegistry(NRCPR)のデータだけに、やはり無視はできないことも事実です。

院内心停止は、院外心停止と異なり、PEA、Asystoleの割合が多いことが特徴的です。このNRCPRではPEA/Asys80%、VT/VF20%ほどです(院外心停止ですとVT/VFは45-71%ほど)。ちなみに、NRCPRよりnの桁が2つくらい少ないですが、日本の院内心停止のレジストリーでも、PEA/Asys70%、VT/VF30%とPEA/Asysが多いです。
病院の主要科や規模、急性期病院か否か等によっても大きく異なってくるでしょうが、全体としては、院内心停止は、院外心停止とは明らかに質が異なります。基礎疾患を有している人や全身状態が悪い人が多い(病院だからあたりまえ)ことが影響していると推測されます。PEA、Asystoleですと当然ショック適応なしですから、AEDを使用すると、パッドを貼って、解析する時間の分、胸骨圧迫時間・回数が少なくなるわけで、これがAED使用の蘇生率悪化に影響を与えている因子の1つとなっていると推測されるわけです。

この論文は、AEDの限界を示唆する一方で、胸骨圧迫の重要性の更なる裏付けとなりうるものではないかと思います。やっぱり、絶え間ない胸骨圧迫が極めて重要だ、と。胸骨圧迫の重要性を示唆する論文と考えれば、心肺蘇生教育の場でも、べつに困惑することもないでしょう。

解析中、充電中も胸骨圧迫継続が可能なAEDが開発されれば、このAEDの限界を打破できるかもしれません。
こんなこともありましたし、この記事の最後の論文の"Hands-On Defibrillation"のように、手袋して胸骨圧迫すればショック中も感電しないので、充電〜ショック中も胸骨圧迫継続可能になることも有り得る?(笑)

現状の院内においては、訓練された医療従事者(現状の日本なら訓練された医師のみでしょう)であれば、AEDではなく、手動式除細動器を使用すべきと考えざるを得ないでしょうから、心肺蘇生教育の場では、受講生のレベル次第で、その旨お伝えすることになろうかと思います。AED使用の際には迅速、かつHigh Quality CPRもお願いしますね!っと念を押すことも重要でしょう。


今後この論文が、ガイドラインやプロバイダーマニュアル等に反映されてくる可能性もありますよね。。。どうなのかな。

上の論文を読んだ看護師さんは、近い将来日本版ナースプラクティショナーの先駆けとなる辣腕看護師養成の大学院に通いスキルアップに励んでいる方です。だから、英語の論文も読むわけです(ぱちぱち)。ナースであっても、訓練されていれば手動式除細動を施行可能になりえるか。そんな可能性を支持しうる論文かもしれません。その看護師さんの研鑽のモチベーションにもなりえるかな。

大掃除

大掃除の季節です。”捨てる”系の本は多数ありますが、最近、こんな本を読んでみました。

「モノのために家賃を払うな!~買えば買うほど、負債になる」 あらかわ菜美





まあ、どの本も似たり寄ったりですが、ちょっとこの本、面白かったです。モノに対する考え方が変わりました。題名に内容がよく凝縮されています。

モノで埋めつくされた空間は、たんなる「物置き」でしかない
「物置き」のためではなく、「ゆとりある空間」に大切なお金を払っていく
いらないモノでお金を失う。
モノに家賃を払わない。
使わないモノに、道具としての価値はありません。つまり、使用頻度が高ければ高いほど、モノとしての高い価値かあるのです。
収納するモノというのは、あまり使わないモノなのではないでしょうか。使わないモノは、いらないモノ、ムダなモノです
使わないモノにスペースを奪われていることのほうがよほど、「もったいない」とは思いませんか。買ったこと、もらったことが、そもそも間違いだったのです
残しておくべき服は、「それを着て外に出かけられる服」だけにしましょう



自分も単純ですから、すぐに影響されて、結構、モノを捨てています。お陰で、病院のデスクは奇麗になりました(笑)。
無駄な買い物も減ると思います。

2010年12月28日火曜日

つぶやき。

今日。

若年男性。ERでCPAになり、CPR。カテ室でPCPS。みんな協力してCPR!
経験豊富な優秀な救命センターの後期研修医や、初期研修医。一生懸命CPRしてくれました。
カテ台の上でのcompressionは大変やりづらいのは百も承知ですが、それでも、High Qualityとは言い難い。残念。

みんな出来るつもりでいるBLS。意外と難しいBLS。わかっちゃいるけど、意外とできないBLS。

院内オリジナルのBLS講習会や、院内ICLSなど、それなりに教育機会がある当院でも、こんな程度。

そんな講習会で指導している者のスキルも、現場では必ずしもQualityは高くない。

Qualityが高くないことを、恐らく誰も認識していない。

心肺蘇生教育において、日本独自のシステムと、AHAのシステム、大きな差を実感します。

まだまだ伝えなければいけないこと、、、、あるなあ。。。。。とひしひし感じた夜でした。仕事納めだったけど。

よっぱらい更新ですから、気にしないでください。おやすみなさい。

2010年12月26日日曜日

G2010 Adult Cardiac Arrestの疑問点

G2010 Instructor Updateの際、出た意見。Adult Cardiac ArrestのAlgorithmについて。





Box.10の次のrhythm checkでorganized rhythmが出た場合、どこに進めば良いのでしょう。このflow chartを純粋に辿れば、pulse checkせず?、Box.11に進んで2分間CPRを追加することになってしまいます。ほんとかいな??? もっともな意見です。

普通に考えれば、Box.10終了後organized rhythmが出たら、pulse checkをして、脈拍触知するようなら、Box.12に進むわけで、その矢印も本来必要ですね。もうguideline、Handbookは出版されていますから、直しようがないですね(笑)。

G2010 instructor updatesメモ

昨日はG2010 instructor updatesに参加しました。Facultyの先生方はお忙しい中準備も大変だったようです。感謝致します。
内容は、GuidelineやAHA Instructor Networkから得られる情報以上の目新しいものはあまりありませんでしたが、良き再確認にはなりました。

謎も多いです。皆さん御指摘のように、BLSの呼吸の確認は手短に、、、という割にはcheck listではしっかり5秒以上10秒以内、、なる項目があります。手短かにscanするんじゃないようです。
ただし、HeartsaverのAdult/Child CPR and Infant CPRのcheck listの呼吸確認の部分には"5秒以上10秒以内"の記載はありません。記載漏れなだけ?
呼吸確認のscanの際には、服は脱がせる?いつ脱がせるんでしょう。HCPのCAB sequenceのビデオでは服がはだけている状態でscanしています。Heartsaverのビデオでは服来たままscanしています。Heartsaverのchecklistには、呼吸の確認の後、"Bares victim’s chest and locates correct hand (infant: finger) position"のcheck項目がありますから、この時点ではだければよいのでしょう。
反応ないだけではだけさせたら、一歩間違えれば誤解が生じかねません(笑)。
BLS for Healthcare Providers Student Manual Comparison Sheetには「Compressions should be initiated within 10 seconds of recognition of the arrest.」とあり、隣接する文面から解釈すると、" arrest "とは、脈拍触知しない、ということではなく、反応なく正常な呼吸がないと判断した時点を意味しているのでしょうか。その時点から、救急システム立ち上げ・AED要請→脈拍確認→胸骨圧迫開始までが10秒以内にすべし、、ということですね。忙しいですね。脈拍確認は5秒でお願いします(笑)。”10秒"にはあまり意味はなく、迅速にやりましょう、という解釈が妥当そうです。
HeartsaverとBLS for HCPの手順の相違も整理されました。ふんふん。異なる手順のHeartsaverのskill check listが存在することも指摘されていました。こちらのページでも大変分かり易く解説されていました。
CoSTRには、難治性VT/VFにNifekalantが有用である可能性が記載されていますが、USAでは認可されていない薬剤であり、当然AHA guidelineにも記載はありません。AHAのものではあっても、その日本語訳のmaterialには、Nifekalantの注釈をつけてもらうのが我々の現場にはよりpracticalと思われ、その旨AHAに意見しているそうです。
Continuous waveform capnographyは、挿管の確認における使用についてはClass I,LOE Aなんですね。これは是非導入せねばいけません。ちなみに、CPRの質の評価についてはClass IIa〜bといったところです。

蘇生後の低体温療法はVFでは、一応Class Iですが、「nも少なくて、たいしたエビデンスはないんです」だそうで。そうなんだ。今後我々日本がエビデンスを作っていかねばならない分野ですと大先生は御意見されておりました。その通りですね。言葉だけでなく、大先生のJ-Hypoも頑張っています。

G2010のmaterialが出そろうまでのinterim trainingの運営もまだ不明確な部分があります。ABCとCABが入り乱れて混乱しそうな気もしますが、ネットを拝見していると、既にG2010interim trainingを開催しているTCも有るようです。早い!


G2010とは全然関係ないですが、CPR50周年といった話題から、CPRの歴史が紹介され、その中で"closed-chest cardiac massage"なる1960年のJAMAの文献が提示されてました。なるほど、こんな言葉があるんですね。あわててメモしてしまいました(笑)。

2010年12月19日日曜日

繰り返し。。。

50代男性。
元来健康。胸痛既往なし。
朝9時頃突然胸痛が出現、冷汗あり。その後やや軽減し、鈍痛となるも症状消失せず。10:30救急外来受診。
受診時BP143/93,P86,SpO299%、バイタルサインは保たれており、身体所見では著明な異常所見なし。
対応した研修医はすぐに心電図記録。



研修医は、明らかな異常はないと判断。かつ、トロポニン定性検査陰性。その他採血異常なく、胸部レントゲンも異常なし、、、、、。胸痛の原因はよくわからず。救急外来のベッドで横になってもらいつつ経過観察。
それでも改善しないため、12時頃になり、循環器の当直に連絡がありました。「一応診てもらえますか?」

すぐに救急外来に行き、診察。まだ胸部の鈍痛が持続しているとのこと。ECGは来院時の一度しか記録していなかったのですぐに再検してみました。しかし経時変化なし。来院時同様正常範囲内の所見。しかし胸部正中の圧迫感、鈍痛、即ち虚血性胸痛に矛盾しない症状が持続しており急性冠症候群は否定できません。すぐに心臓超音波検査を施行したところ、下壁領域で壁運動が低下しているように見える部位があります。広範ではありませんが、急性心筋梗塞の可能性十分ありと判断し、すぐに冠動脈造影を施行しました。
右冠動脈#4の末梢病変でしたが、完全閉塞していました。primary PCIし、CCU帰室しました。

結局1.5時間循環器コールが遅れ、その分心筋ダメージが増えたと推測されますが、幸い、合併症なく順調に経過しています。
研修医には、心電図が正常で、心筋マーカー陰性の急性心筋梗塞もいるから、胸痛患者を目の当りにしたら諸検査が正常でもすぐに循環器医を呼びなさい、と再三指導しているのですが、何度言っても、この繰り返しです。循環器医は怖いから呼びづらい、、、との意見は以前から耳しています。この辺は当方も改善せねばいけません(苦笑)。
それ以外にも、以前ちょっと御紹介した本の一説




人々が知ったことを行動に移さない(移せない)三つの理由

『情報過多』多量の知識を1,2度学ぶより、少量の知識を何度も学んだほうがいい
『ネガティブなフィルター装置』
『フォローアップの欠如』一にも、二にも、三にも、繰り返すこと




この辺にkeyがあるのかなとも思っています。

ガイドライン的にも、胸痛患者で12誘導心電図で明らかな異常がなくとも、ACSの可能性が否定できなければ、5-10分毎に心電図を記録し経時変化をとらえること、とされています。今回は、結果的には経時変化はなかったものの、そんな対策も講じていません。そもそも、初めの12誘導心電図は救急専門医、循環器医と判断すべきと推奨されています。
毎年同じ事言っています(苦笑)。

高度房室ブロック??

急性大動脈解離で入院した患者に、Beta遮断薬を投与、増量していたところ,心電図モニターでこんな所見が記録されました。
後期研修医が、「QRSが脱落し、高度房室ブロックを疑う所見ですから、Beta遮断薬は減量することにしました」と報告してくれました。
急性大動脈解離にはBeta遮断薬は良い適応ですが、陰性変時作用がありますから、ブロックなどの徐脈性不整脈の副作用を認めることは時々あります。




なるほど、確かに、QRSが抜けています。



さて、ホントに抜けている?? 病的??

2段目の赤い線が書いてあるところ、看護婦さんが書いてくれたようですが、ここがそのQRSが抜けているとされる部位です。
その中央付近が、やけにflatに見えます。僅かな基線の揺れもなく、やや不自然にみえる気もします。高度房室ブロックなら、P波は等間隔で出現するはずです。赤線左端やや左のQRSはしっかりP波を伴っています。次のP波は確認できますが、その次のP波は、確認できません。不自然なflatな線のみで、P波らしき上向きの波形は確認できません。これが全くもって納得できません。
不自然なflatな波形直後の上向きのふくらみ波形(赤線左側3/4付近)があります。これは、、、、T波を等間隔に辿ると、このふくらみに一致します。これは、T波の可能性が高いです。
P波とT波の位置を書いてみるとこんな感じ。




結論的には、理由は分かりませんが、中段、左から2拍目のP波の直後からごく短時間の間、何らかの原因(機器の問題)で心電図が出力されずに、不自然なflat波形となってしまい、2拍目のQRSと(T)波は確認できません。3拍目の(P)波もQRSも確認できませんが、T波は確認できます。このT波が出たところで波形出力が再開したと思われます。
患者さんの波形に異常があったわけではなく、心電図機器のトラブルの問題の可能性が高そうです。
ということで、房室ブロックが出現した可能性は極めて低く、Beta遮断薬の減量も不要と思われます。

原因はなんだろう。。。。困りますよね。

2010年12月17日金曜日

MBA入院

Macbook proがクラッシュし、死亡、新規購入。

iPhoneの画面が損傷増悪し、修理(無料(にこにこ))。

そんなトラブルに引き続きまたもやトラブル発生!!!!

日々酷使しているMBAの関節が骨折脱臼です(がーん)。

病弱な子供を持つ親の気分です(笑)。3兄弟みな病弱。




昨日、本日と2日連続でapple storeに足を運び、MBA入院です。
ヒンジをディスプレイごとまるまる交換してくれるそうです。しかも、無料(にこにこ!)。

無料なのはよいですが、MBAがないと、日々の業務に支障を来たし、大変不便です。
短期入院を祈るばかり。

2010年12月15日水曜日

Boston Scientific Guidewire Kinetix 使用禁 詳細


ようやく、時間がとれたので少し詳しく書きます。

RCA#1distal-#2distalのCTOへのPCI。LAD-Septal経由のRetrograde approachで、CorsairをCTO遠位端まで持ち込み、Reverse CARTでRetroのMiracle3gをRCA近位の真腔に進ませようとしましたが、少し引っかかるので、よりソフトなGWのほうがよいかなと思い、サンプル使用で出していたBonston Kinetixに変更、RetroのCorsairに挿入し操作していたら突然stuck! 全く動かなくなりました。何が起こったか分かりませんでした。押すこともできない、引くことも出来ない。しばし操作するも、Kinetixの先端がCorsairから出るか出ないかくらいの位置から、微動だにしませんでした。仕方ないので、かなり強い力で引っ張ったところ、"ブチッ”という音とともにKinetixが抜けてきました。切れたかと思いましたが、幸い? 切れていませんでした。原因はよくわからないと思いつつも、今度はRunthrough NSを挿入しようとしましたが、途中でつっかえて進まなくなり、Runthrough NSをCorsair先端から頭を出すことができませんでした。Corsairが詰まっているようでした。試しに、Conquest proも挿入してみましたが、これも途中で当たり、Corsair先端から頭を出すことができませんでした。えいえい、と強めに突いてもだめでした。Corsair内に何かが詰まっているか、閉塞しているか、でした。Retrograde のCorsairは機能不全に陥り、結局泣く泣く抜きました。抜いたあとも、Corsair内を水をフラッシュすることはできませんでした。

その後、antegrade approachに際しても、別のCorsairにKinetixを入れて操作する機会がありましたが、またまたStuck。これも同様に、その後Corsairは糞詰まりになり使用不可となりました。

このPCIでは、他にRunthrough NS Floppy、FielderFC、Conquest pro、Miracle3g、、など多くのGWを使用していましたが、Kinetix以外のGWでは全くstuckするような現象は生じませんでした。

ちなみに、ACTは30分毎に測定し、300秒以上を維持していました。

Kinetixだけが、2度も同じ事態が生じるとは、やっぱり、Kinetixのせいと思ってしまいます。原因を解明してもらいたいものです。それまでは絶対にKinetix+Corsairは使用しないほうが安全です。

Bostonの担当者に聴けば、湘南鎌倉病院でも同様のstuckが生じて、同院ではKinetix不採用となったとのこと。その一件の後、Kinetixの膨張実験なども施行したそうですが、明らかな異常は呈さず、原因は不明のままと。
Kinetixが原因と言い切れずとも、そのようなことが有ったのなら、予め教えておいてほしいものです。
危険となりえる事象が生じていたにもかかわらず。それを伝えずに使用を促している態度が、問題です。
自分の情報収集不足とはいえ、しばらくBostonのものは使いたくありません。。。

2010年12月10日金曜日

絶対に!

一部では有名な話らしいのですが、知りませんでした。今日かなり痛い目を見ました。
BostonのKineticsなるguidewireは、絶対にCorsairと使ってはいけません。相性超悪です。

2010年12月5日日曜日

アメリカン体験

今回受講させて頂いたBLS for HCPは、受講生5人の小規模コースでした。CDとインストラクターは計2人で、あとはモニター4-5人だったと思います。その他スタッフも数人いらっしゃり、総勢10人程での運営でした。CD、インストはベテラン医師でしたが、その他の方々は医学生、柔道整復師の専門学校生、即ち学生が大勢を占めている、大変若い方々でした。年齢も若いし、インスト経験も超若い。でも、皆さん礼儀正しく、真面目そうで、好感が持てる方々でした。元気で、気さくな雰囲気で、これがアメリカンなのでしょうか(笑)。良き集団だと思いました。若いって、いいです!
受講生は自分以外に、若手小児科医師、年配の小児科医師、医学生、専門学校生でした。
受講生1人にマネキン1体、インスト1人という超贅沢な環境でした。マンツーマンとは素晴らしい。毎回こんな環境なわけはないと思いますが。運営収支が心配になります(笑)。モニターだから、インストフィーは節約できているのかな。
自分を担当してくださった方も医学生で、モニター中のようでした。意識してしまうでしょうから、自分がBLSインストラクターであることはお伝えしませんでした。隠すつもりはなかったのですが。幸い自分のスキルは初めからほぼ完璧でしたので、多分インストは楽だったことでしょう。逆に楽すぎて、かえって困ったかもしれません(笑)。
途中、成人1人CPRの実習時間では、時間あったので、G2010バージョンCPRをやろうと提案し、試行してみました(笑)。逸脱した受講生に、困ったかも(笑)?。

インストに関して、コースに関して、細々感じた事は沢山ありますが、いちいち書いていたらきりがなくなるので、辞めます(笑)。大雑把なことだけで。

学生インスト候補を多く抱えているグループだけに、将来大変楽しみです。若者が多いことは良いことです。活気があります。ただ、本当のBLSなどした事もがない方々ですし、医学的な知識、経験も乏しいですから、BLS for HCPのインストラクションをすることは御本人にとっても大変ですが、教育する先生方も大変です。コースの質を落とさず、一人前のインストラクターに育成するのは大変なことと思います。自分は、かつては学生など経験不足のAHAインストラクターには否定的見解を持っていましたが、本日参加されていた方々の真面目な姿勢を見ていると、応援したくなります。是非頑張って頂きたいと思います。
PAMによれば16歳以上ならBLSインストになれるわけで、若者インスト育成もアメリカン、ということなのでしょう。

コース自体はDVD1:1でサクサク進んで、良かったですが、レッスンマップ通りには進んでいませんでした。これもテキトーなアメリカ的なのかな(笑)? 所々、今後の参考になるようなDVD進行あり、勉強にはなりました。
プロジェクター、画質がいまいち、音響はいまにいまさん、だったかな(笑)。このへんも、細かいところにこだわらないアメリカンってことで(笑)。プロバイダーカードはコース修了後、手元に届くまで3ヶ月かかると言われました。へえ、長っ!。この辺も、のんきなアメリカン。インスト更新のために早々にプロバダーカードが必要でしたので、頼んで、修了証を発行してもらいました。せっかちな日本人ですいません、お手数おかけしました。

気になった点は、プロバイダーマニュアルはじめとするAHAのマテリアルから逸脱したことを指導する点がたびたびありました。モニターではないインストラクターの先生でした。
最大の問題点は、最後の実技試験がありませんでした。なぜ??? 一連のコースが終わった後、筆記試験をしました。これから成人小児1人法CPRの実技試験かな、、と思ったら、「皆さん合格です、おめでとうございます」とのことで終わってしまいました(笑)。あれれ。HCP10でチェックしたよってこと?

そういえば、筆記試験後のフィードバックは何も無くて、点数も不明でした。どうせ満点だろうから、良いのですが。。。。解説の提示もありませんでした。

コース中、関連する所で、G2010の話をその都度話したり、コース後、G2010デモビデオを流したり、今後の展開をお話頂き、その扱いに参考になりました。今回のG2005コースを受講した方は、無料でG2010のアップデートを受講できるって言っていました。親切です。

今回はヤングインスト中心の御参加だったようですが、他にバリバリアメリカンな辣腕インストラクターの方もいらっしゃるのでしょうから、是非機会があればその手腕も見たいと思いました。

思い出すままに、つらつら書きまして、まとまりなくてすいません。

ただ、今回受講してみて、一つの結論。

JCS-ITCの我々周囲で展開しているBLSコースの質、そのインストラクターの質はかなり高いです。再確認できました。
今週末はBLS、BLS-Rです。ACLS-Rもあります。頑張ります。

初心に帰る

最近は現場では心肺停止に遭遇しても若き研修医達がガツガツやってくれますので、自分自身で身体を使ってCPRをすることは殆どありません。コースでも、インストラクションするだけで、自らがCPRをする機会はありません。そもそも、最近はインストラクションする機会さえ少ないです(苦笑)。偉そうにインストラクションしていますが、本当に自分にそれだけのスキルが有るのか。30:2を5サイクルしっかり行える体力があるのか(笑)?確認したくなりました。

そこで、本日AHA BLS for HCPを受講してきました(笑)。BLSコースの"受講"は5年振りくらいです。
"本場アメリカ仕込み"を売りにしているAHA-USインストラクターの集合体である、AMR-JAPAN主催のコースを受講しました。
最大の受講目的は、上記のように①自分のスキルを確認すること、です。
以外にも、②忘れかけていた受講生の立場を今一度体験してみる、③他ITCや他サイトのコースを見てよきところを学びたい、④特に、本場アメリカ仕込みのインストラクション、コース運営を体験して学んでみたい、⑤BLSインストラクター更新時期が迫っているのでプロバイダーライセンスをgetしておくと都合が良い、⑥運動不足解消(笑)、⑦今日なら何とか予定を空けることができた、などです。また、AMR-JAPANは、AHAガイドライン変更への素早い対応、、も売りにしているようですので、もしかしたらもしかしたらG2010の指導も有り得る??という淡い期待もありました。そうでなくとも、G2005→2010の移行で、コース展開が微妙に難しい時期ですから、その点をどのように表現しているかにも興味がありました。

結論的には、G2005コースでした。まあ、当たり前ですよね。
G2010コースの準備も出来ているが、試験問題等が届いていないとのことで、最後のG2005コースです、すいません、とのお言葉でした。

それはさておき、まあ楽しく半日過ごせました。自分のスキルが最高レベルであることが確認できました(笑)。自分でも最高と思える手技ができましたし、御担当頂いたインストラクターの方にも、教える事は何も無い、と言われました。feedbackのお言葉は、"完璧です”だけ(笑)。持病の腰痛が悪化する事もありませんでした(笑)。持病の40肩が悪化することもありませんでした(笑)。

日々の地道な腕立て伏せも、きっと役立ったのでしょう、胸骨圧迫も5サイクルくらいは楽勝です。やっぱり良きBLSには腕立ては必須です(笑)。胸骨圧迫5cm以上って実際よくわかりませんでしたが、G2010を意識し、出来るだけ深く押して、胸骨上のみに力を集中させ、そして1分間に100回以上で頑張りました。30回を15-16秒くらいでこなすことが多かったです。G2010にもすんなり移行できそうです。PWWではDVDより速くやったので、タイミングがずれていまいちでした(笑)。
乳児のCPRの時は、反応がないことを確認した後、救急コールと除細動器! と言ってみました。院外ならAEDかな。担当してくれていたインストラクターはこの辺理解してくれたかな?

5年前に購入して現場では一度も使っていないフェイスマスク(ポケットマスク)を持参したため、そのクッションが古びて、よれよれ、ぺこぺこになっていて、マスクフィットがしづらく、時々空気が漏れて胸郭挙上が甘くなることがあったのが、唯一のマイナスポイントでした(笑)。
コースの印象等については、別にまた書こうと思います。

お世話下さった方々、有り難うございました。

Kamakura Live Demonstration 2010



今年もまた、Kamakura Live Demonstration に参加です。
Slender PCIには限界を感じ、最近、少々飽きてきた(笑)のですが、やはり大御所齋藤滋先生の技術は目に見張るものがありますから、ついつい見に行ってしまいます。今日も色々勉強させてもらいました。

Slender clubを厚くバックアップしている齋藤先生ですが、10wireをバッサリ切っていましたね。ワイヤーの進歩がないと、slender PCIの将来は暗いかもしれません。IVUSしない斎藤先生は、slender guidecathe.+14wireで、さくさくやっていますが、自分的にはIVUS必須ですからやはり日常のslender system使いにはまだまだ壁が有ります。4F OCTには少々驚きましたが、まだ問題も多々ありそうです。

本日のライブ中、LADへのPCIでステント留置し、最終造影をした直後、理由は分かりませんが、突如VFになりました。外回りの面々が瞬時に大挙患者に押し寄せ、胸骨圧迫、電気的除細動、、、すごい速さでした。適切な処置で事なきを得ました。大変教育が行き届いていると思われます。
そんな中、VFになっても、眉一つ動かさず、平然としている齋藤先生。ガイドワイヤーはしっかり保持しつつ、ガイドカテをLMTから外していました。ガイドカテはslenderですから、LMへのウェッジや、損傷が原因のVFではありませんでしたが、これは冷静な対処です。脳虚血で痙攣を生じたり、CPRによる体動でガイドカテが動いて、LMTを損傷したりすることも有り得るでしょうから、そんなリスクを避けるべく些細ながらも素晴らしい対処です。ライブは、トラブルが起こった時こそ、学ぶことが多々あります。

2010年11月28日日曜日

G2010前、G2005BLS

昨日は久し振りに他施設開催のBLS for HCPに参加しました。いつもは自施設開催で、CD業務や裏方業務に終始してしまうことが多いため、ブースに入って受講生を直接指導するのも久し振りでした。
G2010が発表されて、頭の中はもうG2010モードですが、G2005のコースです。当然ABCですし、当然"見て聞いて感じて"です(笑)。はやくG2010コースにならないかなー(笑)。
異論のある方は当然いらっしゃると思いますが、それでも、受講生を混乱させない程度に、G2010のエッセンスを少々入れて傷病者の生存率向上に寄与しようと個人的企みをもち、主に2点、以前と少々違ったインストラクションをしました。1つは死戦期呼吸。G2005ではコース終盤のDVDでちょっと触れるだけですが、それをコース前半から言及。死戦期呼吸によって心肺停止の認識が遅れ、CPR開始が遅れ、救える命が救えなくなることが少なくないことをお伝えしたり、休憩時間に死戦期呼吸の映像をお見せしたりしました(反則?(苦笑))。もう1つは、チームワーク。お互いの役割を明確にし、お互いの手技を確認し合い、励まし合い、2人でコミュニケーションを十二分にとって、協力して最高のCPRを傷病者(マネキン)に提供することを繰り返しお伝えしました。
担当した受講生は循環器内科の不整脈専門医の先生と、ベテラン看護師さんでしたが、楽しんで学んで頂けたと思います。今回学んだことを、各々の職場、現場でもきっと活かしてくれると思います。

チームワークについては、G2005ACLSのteam dynamicsの概念を、BLSコースでも自然に無理なくお伝えできればいいなと思います。残り少ないG2005コースですが、インストする機会があればもう少し工夫してみます。G2010BLSではどのように伝えることになるのか、楽しみです。

今回のコースは様々な所からインストラクターが参加され、また開催施設のインスト、スタッフの皆さんも大変良く働いて頂き、スムースなコース運営でした。コース後の反省会でも貴重な意見が交わされ、勉強になりました。有り難うございました。
あまりに楽しくて、その後の懇親会では、飲み過ぎ、意識不明になりました。反省です(毎回同じこと言ってる(汗))。御迷惑をおかけてしてたらすいません。

team dynamics 2010

約1年前にteam dynamicsについてこんな記事を書いています。

http://jblog20090211.blogspot.com/2009/10/team-dynamics.html

G2005のプロバイダーマニュアルになぜ、突如team dynamicsが出てきたのか?、evidenceはあるのかな?という疑問の話でした。

G2010には、「チームワークは様々な臨床状況で患者のアウトカムに影響を与えると報告されている。チームワークやリーダシップのトレーニングは、蘇生行為を改善させることが示されている。」といった感じの記載があり、チームワークとリーダーシップのトレーニングはACLSコースに含めるべきである(Class I LOE B) と推奨しています。へーそうなんだ。

引用文献も沢山あります。自分の情報収集能力不足でした。ちょっと読んでみたい題名がいっぱいです。

112. Does teamwork improve performance in the operating room? A multilevel evaluation. Jt Comm J Qual Patient Saf. 2010;36:133–142.
113. The cognitive basis of effective team performance: features of failure and success in simulated cardiac resuscitation. AMIA Annu Symp Proc. 2009;2009:599–603.
114. Teamwork: crew resource management in a community hospital. J Healthc Qual. 2009;31:14 –18.
115. Teams communicating through STEPPS. Med J Aust. 2009;190(suppl):S128 –S132.
116. Does team training improve team performance? A metaanalysis. Hum Factors. 2008;50:903–933.
117. Surgical team behaviors and patient outcomes. Am J Surg. 2009;197:678–685.
118. Brief leadership instructions improve cardiopulmonary resuscitation in a high-fidelity simulation: a randomized controlled trial. Crit Care Med. 2010;38:1086 –1091.
119. Teaching teamwork during the Neonatal Resuscitation Program: a randomized trial. J Perinatol. 2007;27:409–414.
120. Development of a leadership skills workshop in paediatric advanced resuscitation. Med Teach. 2007;29:e276–e283.
121. Improving medical emergency team (MET) performance using a novel curriculum and a computerized human patient simulator. Qual Saf Health Care. 2005;14:326–331.
122. Assessment of CPR-D skills of nurses in Goteborg, Sweden and Espoo, Finland: teaching leadership makes a difference. Resuscitation. 2007;72:264 –269.
123. Error reduction and performance improvement in the emergency department through formal teamwork training: evaluation results of the MedTeams project. Health Serv Res. 2002;37:1553–1581.
124. Improving in-hospital cardiac arrest process and outcomes with performance debriefing. Arch Intern Med.2008;168:1063–1069.

2010年11月20日土曜日

小児病院

ある小児専門病院の敷地内で心肺停止に陥った成人男性の方がいらっしゃいました。院内緊急コールがなされ、CPR開始、その小児病院の初療室にとりあえず搬送、ACLSを継続したようです。難治性VFで、アドレナリン、アミオダロンも使用され、10回以上の電気的除細動が試みられましたが洞調律に復さず、CPR施行したまま当院に転送されてきました。

結局ACSからのVFで、PCPS、PCI、低体温療法などで対処しました。

小児科の先生方も、ACLSはしっかりとマスターされているようです。さすがです。
自分は、、、、PALS未受講です。うーん。近いうちに、受けようかな。

さすが小児科の先生と思った点。静脈路が確保しずらかったのでしょうか、腸骨と脛骨近位に1本ずつ、計2本の骨髄路が確保されていました。きっと慣れているんでしょう。ぱちぱち。

2010年11月16日火曜日

。。。。。

実際の臨床では、なかなか教科書通りに治療がはかどらない方が少なくありません。

高度〜完全房室ブロックで、心肺停止に近い状態で入院されてきた高齢者。本来恒久的ペースメーカー植え込みの適応でしたが、感染症併存などの事情あり植え込みできず。感染症治療に難渋し、数ヶ月というspanで保存的に対処されていました。一時的ペースメーカーも抜去され、幸いその間、心臓的な病状は落ち着いていました。ようやく感染症も落ち着きをみせ、恒久的ペースメーカーもそろそろ植え込めるか、、という時期でした。



重篤な心疾患を有していることなどすっかり忘れてしまっていたこの時期。。。。。突如高度房室ブロックから、心静止に移行しました。心電図モニターの異常に気づいた看護師が訪室、反応なく、脈拍も触知しないためCPR施行となりました。早々に医師らも訪室。High qualityを意識したBLS、とりあえずは換気はBVMです。ACLS secondary surveyとして、静脈路を確保したいのですが、とれません。静脈が大変細い方です。頸骨粗面から骨髄路確保を試みましたが、硬くて骨髄針が曲がってしまいました(汗)。やり慣れない手技ですから、コツがつかめていないのでしょうか。気管内投与を念頭に気管挿管しました。並行して、大腿静脈確保を試みて、こちらが確保できたので、大腿静脈からアドレナリン1mgを投与しました。
また、心静止にはTCPは推奨されていませんが、病態的にペースメーカーも有効な可能性があり、TCPも試みました。もちろん胸骨圧迫を中断しないことを心がけました。アトロピンもG2010ではルーチンには推奨されていません(し、完全房室ブロックには効果はないかもしれません)が、有効な可能性もありましたので、投与しました。

その後自己心拍が再開しましたが、ご高齢な方だけに、その後もなかなか厳しい経過を辿りました。。。。


G2005にせよ、G2010にせよ、心停止ルゴリズムが提唱されています。それに準ずることは大切ですが、病態によりmodifyすることはいくらでもあります。重要なことは、HighQuality CPRを常に心がけることです。

例えば 、VF患者の生存退院率を上げるのは早期CPRと早期除細動のみである。他のACLSの治療、即ち、薬剤投与や、気管挿管などは、中には自己心拍再開率改善のデータを有するものはあるものの、生存退院率改善を示したものは全くない、とG2010に記載されています。
ただ、それらのデータは、High Quality CPRや蘇生後のケア(低体温療法など)が強調されるようになった時代以前のものであり、ACLSの各種治療がHigh Quality CPRや至適な蘇生後ケアとともになされれば、生存退院率改善につながる可能性がある、、、といった記載が続きます。

その通りだと思います。今後も、High Quality CPRや至適な蘇生後ケアの状況下での成績に基づき、新たな知見が出てくる可能性は十分にありますね。

2010年11月14日日曜日

11/13BLS

昨日はBLS for HCP。更新コースと新規コースの2本立てでした。
初参加スタッフが複数御参加頂き、コース中や、終了後の反省会でいろいろと質問が出ました。

・乳児の脈拍確認はなぜ頚動脈ではなく、上腕動脈なのですか?

よく出る質問ですが、明確な答えはよくわかりません。以前、自分で調べたのもすっかり忘れていました。最近物忘れが激しい(笑)。

http://jblog20090211.blogspot.com/2009/08/blog-post_11.html


・心臓マッサージと胸骨圧迫、どちらが正しいのですか?

うーん。良い質問ですね。ついつい"心マ!”なんて言ってしまいますね。

信憑性は定かではありませんが、ウェキペディア( http://ja.wikipedia.org/wiki/心肺蘇生法 )には以下の記載あり。
胸骨圧迫(きょうこつあっぱく)とは、心臓あたりを両手で圧迫する応急手当。心臓マッサージと混同されることが多いが、両者は全くの別物である。 心臓マッサージは、外科医師が胸を切開し手で直接心臓を揉むという医療行為である。一方、胸骨圧迫とは、乳頭と乳頭を結んだ線上で身体の真ん中に手の付け根を置き、4 - 5cm程度沈むように圧迫する。肘を真っ直ぐ伸ばし、約100回/分の速さで圧迫を繰り返す。

こんな意見もあります。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1123532501


・窒息解除のためのHeimlich法は腹腔内圧上昇?胸腔内圧上昇?

たとえば、ERC G2005 にはこんな記載があります。

「背部叩打(back blow)、胸部突き上げ法(chest thrusts)および腹部突き上げ法(abdominal thrust)はいずれも胸腔内圧を上げ、気道から異物を除去できるようにする。症例報告の半数において、気道異物の除去には2つ以上の方法(more than one technique)が必要とされている41。最初にどの方法が行われ、どのような順番で行われていくべきかを示しているデータはない。もし一つの方法でうまくいかなければ、閉塞が解除されるまで別の方法を順に試みていく。」

ですから、やっぱり胸腔内圧上昇が大事なようです。

ちなみに、AHA ガイドライン2005 には以下の記載もあります。

「死体を用いた気道確保の方法に関する無作為化試験273),麻酔下のボランティアによる2つの前向き研究274.275)は,腹部突き上げ法よりも胸部突き上げ法を用いたほうが,高い気道内圧が持続することを示している」

G2010では、窒息に関して目新しい情報はなさそうかな。

・2人の救助者による乳児のCPRの胸骨包み込み両母指圧迫法の、親指以外の4本指の動かし方は?DVDでは見えないし!

たしかにDVDでは見えません。プロバイダーマニュアルには「親指で押し下げるときに、他の指で胸部を絞るようにする(As you push down with your thumbs, squeeze the infant's chest with your fingers.)」 とあります。
自分としては、親指と他の4本の指で乳児の体幹を挟むような動きをしていましたが、まあ胸骨圧迫がしっかり行えれば細かいことはどうでもよいのでしょう。
ところで、G2010では、この"絞り(sqeeze)"は有効であるデータはないとの記載があり、過去のもののようなニュアンスで書かれています。2本の親指でしっかり胸骨圧迫が行えればよいのでしょう。ということは、手が小さいかたは、"包み込み"しなくても2本の親指で強く押せればよいのかな? "包み込み"が出来なければ、通常の2本指法が推奨はされていますが。。。。どなたか教えてください。


新たな方が御参加頂くと、こちらも良き復習、良き学びを得ることができます。

2010年11月1日月曜日

外科→耳鼻科→耳鼻科→循環器内科

中年男性。数年前に大腸癌手術既往あり。現在椎間板ヘルニアによる痛みで、NSAIDs内服中。

1-2ヶ月前頃から、歩行すると100m程度で心窩部痛、両側顎下部痛がみられていた。疼痛出現後も歩行を続けていると、少し楽になるときもあり、休むとすぐに疼痛改善見られた。症状の出現はほぼ毎日であった。
相変わらず同症状が出現するため心配になり、かかりつけの外科を受診。腹部エコーにて胆石あり、これによる痛みか、NSAIDsによる症状が疑われ、上部消化管内視鏡を予約し帰宅。また、顎下痛に対して耳鼻咽喉科受診を勧めらたため、2日後近医耳鼻科を経て当院耳鼻科受診。エコー等が予定された。

その2日後の朝、胸痛・心窩部痛で覚醒、起床、冷汗あり、顎下部痛も伴った。改善せず、救急外来受診。

BT 36.1℃ HR 79  BP 162/114   SpO2 98% 




V1-4でST上昇みられ、STEMIと診断、CAG施行し、左冠動脈前下行枝の完全閉塞認め、primary PCI、ステント留置し早期再灌流療法を施行しました。その後経過は順調でした。


8月からの症状は心筋虚血による労作性狭心症だったようです。危なかったです。心窩部痛は、やっかいです。顎への放散もくせ者です。かつて同様のケースで歯科を受診してしまった方もいました。いずれも、虚血性心疾患も頭の片隅にいれておく必要があります。後出しジャンケンですが、このような経験を皆で共有することが大事です。

循環器に限らず、その分野を専門としない者も、致死的となりうる病態を見逃さない視野の広さが求められます。人ごとではありません。気をつけましょう。

2010年10月31日日曜日

胸部叩打

「前胸部叩打法は,除細動器がただちに使用できない場合に,目撃され,モニターされている不安定性 VT(無脈性 VT を含む)の患者に対しては使用を考慮してもかまわないが,それが CPR やショックの実施を遅らせてはならない。」

G2010において、G2005よりちょっぴり復活した胸部叩打。

先日、ある著名な不整脈専門家の講演を聞く機会がありました。
心外膜側に起因するVTと、心内膜側に起因するVTがある、といった少々マニアックな話がでました。
微妙な刺激(超低刺激)で不整脈に影響を与えうる胸部叩打。外からの刺激を受け易そうな印象の心外膜側VTは、心内膜側VTより、胸部叩打が有効である可能性があるかどうか質問しました(笑)。

一瞬、間があったのち、「そんな手技、どちらにも効かないでしょ?」 と一蹴されました(笑)。

確かにその通りかもしれません。基本は電気的除細動(もしくはcardioversion)です。
ただ、一応、G2010では、G2005の時より若干positiveに記載されている旨お伝えしておきました。興味なさそうでしたが(笑)。

復活

先日の心筋炎の若年女性、無事に急性期を乗り越えてIABP、PCPS離脱、人工呼吸器も離脱しました。本当によかったです。まだICUですが、食事も食べ始めました。本人も頑張りましたが、担当の研修医たちも頑張りました。

2010年10月22日金曜日

G2010BLS 実践

若年女性。昨日心筋炎の疑いで入院。低心機能で、ぎりぎりの呼吸循環動態、CCUで管理。PCPSも念頭に、FA,FVは確保されています。
本日早朝急に意識レベル低下したとのことで、当直の自分がコールされました。来室すると、看護師3人ほどでアタフタしており、HR120bpm程、洞性頻拍、血圧70/ほど、末梢冷たくSpO2拾えず、「くるしい、息が出来ない、、」の訴えあるものの意識は朦朧。顔面蒼白、末梢冷感あり、重篤そうな様相です。PCPSが必要と思われ更に応援要請、40%ベンチュリマスクでしたので、リザーバーマスク15Lとし、ドーパミンの用量を上げ、、としていたら、意識レベルが低下、反応が鈍くなりました。頚動脈は触知
できましたので、頭部後屈顎先挙上させ、NPAを挿入、人的余裕が得られたら、気管挿管もしたほうが良さそう、、なんて言っていたら、、反応が鈍くなり、呼吸が微弱となり、頚動脈触知試みても、10秒以内には触知
できず、すぐに胸骨圧迫を始めました。心電図モニターは依然120bm 程の洞性頻拍でした。頻拍性のPEAです。正しい手の位置を意識しつつ、5cm以上しっかり押して、full recoil、100回/分以上のペース、も心がけました。アドレナリンIVの指示を出し、準備が出来たところで、(アルゴリズム通りではないですが)脈拍触知してみたら、明らかに触れました。呼びかけにも開眼するようになりました。CPRは中止。胸骨圧迫は1-2分したでしょうか。アドレナリンは保留にしました。血がスでアシドーシスあり、メイロン投与、その後主治医、担当医などが駆けつけてくれて、気管挿管し、カテ室に移動、PCPS,IABPを挿入しました。
恐らくは原病による心機能の増悪、代謝性アシドーシスなどが悪さをしたものと推測されました。レトロスペクティブに見れば、後手に回ってしまったのが反省点でしょうか。でもリカバリーショットは打てています。今後の回復を願うばかりです。

そんな感じで、G2010を少々意識した対応をしてみました。
反応を確認しつつ、正常の呼吸か否か見てみる、(救急コール、AEDの要請)、脈拍触知10秒以内、無ければ胸骨圧迫、、、
自分にとっては、大変自然に思えました。G2005のBLSの流れよりも、practicalです。今まで現場でやっていた感じに近いです。
一緒に処置をした看護師達にも解説しながらやりました。”正常ではない呼吸”の良い例でした。
また、かえって心電図などモニタリングされていると、ついついそれに気を取られて、心肺停止に気づくのが遅れることが少なく有りません。HR120洞調律でも、頚動脈が触れなければCPRを開始する必要があること、などお伝えする良い機会になりました。若い看護婦さんたちにとってはimpressiveな体験だったと思います。成長を願います。

この方は、BLSのみで自己心拍再開しましたが、この日この後、高齢男性の院内心肺停止が発生、今度はACLSまで行きました。早々に記事にしたいと思います。

2010年10月17日日曜日

iPhone 完全復活!

「iPhoneは修理できず、故障の場合は原則新品と交換」なんて、聞いていました。どうやら自分の勘違いでした。

液晶の陰影が徐々に広がり、通常の使用にも支障を来してきたので、自宅近くのSoft Bank shopに行って、相談してみました。データを全て消してリセットしないとその後の対応が判断できないらしく、それは仕方ないとしても、いちいち要領の得ない説明で、店員によっても言うことが異なるし、対応も悪く、断念。Soft Bank、、、だめだなあ。

幸いこの週末は時間があったので、最寄りのApple Storeに行ってみました。そしたら、購入から1年弱だったので、「あと1週間で保証期間が切れるところでしたね!」なんてにっこり言われつつ、あっさり液晶を交換してもらえました。料金は無料。所用時間10分くらい。もっと早く行けば良かった(笑)。

半分くらい、iPhone4購入か!?という思いもあったので、ちょっと複雑?(笑)

耐久性を期待して、good designのiPhoneケースを探しましたが、もう既に3G対応のものは少なく、多くは4対応ですね。。。。

かっこ良過ぎ

昨日NHKで「プロフェッショナル 仕事の流儀」が復活。復活に先駆け、スペシャル番組としてこれまで出演した人たちの中で、反響の大きかったイチローや宮崎駿など8人が取り上げられました。その中で、慈恵医大血管外科大木隆生教授が大トリで登場!
脳血管への分枝を巻き込んだ大動脈弓部の瘤に対し、ステントグラフトと頚動脈ステントの組み合わせによる新しい手法の治療法に挑む姿が放映されました。途中頚動脈に解離が生じ完全閉塞してしまい絶体絶命の状況に陥いりました。「ちくしょう、、」と声が裏返った動揺したつぶやき。大木先生でも動揺するんだ。。。。。しかしながら、「絶対 なんとしても治してみせよう』と言いながら、諦めずにあらゆる手段をつくし、bail out。「よっしゃ!」の一言。18時間にも及ぶ手術を成功させました。患者は後遺症なく、退院したとのことです。かっこ良過ぎます!

この大手術前、大木先生自身が肺炎を患い、本来1-2ヶ月の入院治療、静養が必要と勧告されます。
しかしながら、上記患者を含め、大木先生の治療を待っているのは、他院で治療を断られた重症ばかり。
自身の入院中のベッドで下記思いを打ち明け、1週間で退院し、上記手術に臨みます。

「患者さんにおいては命を拾ってもらって良かったと そういうものが 自分を突き動かしているわけですよね。そういう期待を裏切ることは、、、裏切ってまで60、70、80まで生きる価値は、僕は ないと」

かっこ良過ぎます!かっこ良過ぎる中に、心底臨床医と感じさせる面が垣間みれて、更にかっこ良い。

大木先生の御家族にとっては複雑な思いでしょう。世界の宝ですから、無理もほどほどにと祈るばかりです。

2010年10月11日月曜日

AHA ACLSコース無事終了。

今回のACLSコース、大変よかったです。質の高いインストラクションはもちろん、雰囲気も良く、涙あり、笑いあり、当初表情の硬かった方も、最後には大変に朗らかな表情でした。質問も多く、随所で活発な議論が交わされました。終了時の受講生の表情や、アンケート結果は大変良く、受講生の満足度の極めて高いコースになりました。参加頂いたインストラクターの方々のお陰です。有り難うございました。

コースそのもののみならず、繰り返しの復習が重要なこと、現場での実践こそに意味があることなど強調したことが、伝わったのではないかと思います。日常で心肺停止の状況に接する機会は多くないとしても、日々患者さんを目の前にしている医療従事者にとってBLS primary survey/ACLS secondary surveyの視点で常に患者さんに接する習慣を付けるとよいと思いますし、日々の職場でteam dynamicsの考え方を応用することも大変有用と思います。心肺蘇生術のみならず、様々な状況で役立つことを御理解頂けたような気がします。

コース前夜、1日目の夜、2日目の夜、と3日連続で呑んでしまいました。これが今回の反省点です(笑)。

2010年10月9日土曜日

ドラえもん(うふ)

と有るサイトに超可愛いドラえもん発見。無断掲載です。問題あったらごめんなさい。でも可愛いでしょ。


iPhone液晶日記

首根っこはじめ、全体が太くなってきました。徐々に画面が見づらくなってきています。iPhone4購入も間近でしょう(苦笑)。


とりあえず、久し振りの更新。

更新が滞っていますが、心肺蘇生教育から手を引いてしまっているわけではありません。
相変わらず、末端の教育活動も続けています(苦笑)。
先々週末は新潟大学のACLS provider courseに参加、先週は自施設BLS for HCP開催、今週は土日で、ACLS provider courseを自施設開催しています。
今回のACLSは、受講生は看護師中心ですが、循環器医、外科医、麻酔科医、放射線技師、医学生、、といった方々も参加しておりバラエティに富んでいます。皆さん、エネルギッシュで、楽しいコースです。明日も心電図補講、頻拍、Putting it All Together、試験が残っています。楽しみです。

コースは、様々な受講生、インスト、スタッフ、、、良き出会いがあって、楽しいです。自施設開催となると苦労も多いですが、大事にしたいです。継続していきたいです。

ブログも、良き出会いがありますので、継続していきたいですね(苦笑)。心新たに、頑張ります!

2010年9月23日木曜日

iPhoneピンチ。

7月にiPhoneを約1mほどの高さから落としてしまいました。画面にスジが出現。初めはほんの僅かな点だったのに、徐々に広がっていきました。受傷後約1週間でここまで広がりました。




更に、徐々に徐々に拡大。約2ヶ月経過して、こんなになってしまいました。
相当、画面が見づらいです。。。これ以上広がるようだと、そろそろiPhone4に買い替えか。




一方で、数日前、突如MacBook Proの画面がつかなくなりました。電源は入るのですが。
Apple storeに持ち込んで、調べてもらったら、なかなか重症らしく、簡単には治らなくて、修理代は5万以上かかるとか。どーん。
悩んで、結局、新しいMacBook Pro買っちゃった(笑)。
Time machineでバックアップを取っておいたので、データや設定は全く無事でした。本当に良かったです。Time machineは相当優れものですね。

2010年8月24日火曜日

CVIT2010

8/22-24仙台でCVIT2010が開催されました。心臓カテーテル治療に関する学会です。新規オープンしたウエスティンホテルでの開催です。奇麗でしたが、さすがに狭く、エレベーターが大行列だし、今ひとつ過ごし心地は良くありませんでした。インターベンションに関して印象に残っているのは、手技を行う際に、組織病理(Histopathology)をイメージすることが、CTO治療の進歩に大きく寄与した、と複数の"master"の先生方が仰っていたこと。
無造作に操作してはいけません。繊細な操作とともに、Histopathologyを意識し、少しづつワイヤーを進めていくんですね。マレーシアからのCTOライブ中継では、Histopathologyの"H"も感じられないような大雑把なワイヤー操作でしたが(笑)。

個人的には、北里大学の猪又先生の、急性心不全の急性期でも(慎重に症例を選択し)積極的にβ遮断薬を投与していく(と予後が良い)という話や、国循宮田先生のHITのお話など、ランチョンが思いのほか勉強になりました。

いちばん、印象に残ったのは、牛タン屋 「閣」の牛タンのたたきです(笑)。仙台歴の長い方曰く、仙台で一番おいしい牛タン。
ちょっと食べかけですが、記念写真とりました。

初HSAED

先週末にHSAEDにインスト参加しました。成人、小児のCPR、AED、窒息の対処のコースです。お恥ずかしながら、初参加(笑)!HCPとのビミョーな相違や、院外設定(当たり前)、DVDではシナリオシーンが頻発したり、と細々したところで慣れが必要と思いました。それでも、DVDは何度も見返していたので何とかこなすことができました。受講生は某製薬会社の社員の皆さん20名以上で、みなmotivationが高く、楽しい時間を過ごしました !
でもBLS for HCPのほうが楽しいかな、個人的には。医療従事者とのdiscussionが楽しいです。どっぷり医療業界に浸ってますから(笑)。ACLSのほうがもっと楽しいけど(笑)。
コース後は、おいしいおそば屋さんで懇親会をしました。おそば屋さんのご主人はsudden death survivor(!)ですって、若いのに。

2010年8月17日火曜日

ポータブル心エコー

循環器診療の分野において、超音波検査の有用性は言うに及ばず、超音波検査なしでは循環器診療は成り立たないくらいの大きな存在となっています。超音波機器の小型化も徐々に進んでいます。これまでもポータブルエコーと称する機器が色々と開発され、現場に提供されてきましたが、台車がデカかったり、意外とポータブルではない(笑)、のが正直なところ。

しかし、これはまさに、ポータブル(感動)! GEのVscan。







しかも、画像はかなり奇麗。十分に使えます。ちょい当てエコーに最適。白衣のポケットに入ります。動画、静止がも保存できます。
定価98万円!(笑)。個人でも、頑張れば買えます(笑)。

ただーし。2Dと、カラードップラーのみで、PW、CWは使えません。
これは痛い!ちょい当て心不全評価としては、PW、CWは欲しいところ。
バージョンアップの後継器を狙おうと思います、自分としては(笑)。

いずれ、ipadとか、iphone用の、bluetooth等無線経由で使えるプローベのエコーアプリが出るんだろうなあ。


そういえば2

先の記事の関連事項。
自施設のBLSコースに、他の某ITCのインストラクターの方に参加頂きました。同じAHAとはいえ、異なる環境で活動しているインストと共にコースを経験するとお互い何らかの学びを得ることあるはずですから、互いの成長が主目的です。

その、他ITCの方のインストラクションの感想。質の高いインストラクターの育成に力を入れているJCS-ITC畑の自分としては、正直なところ少々物足りないインストラクションでした。彼自身の問題というよりは、彼への教育、ITC(もしくはTS)の姿勢が問題のように感じました。その彼はある意味犠牲者なのかもしれません。久しぶりのインストラクションという背景もあったようですが、いずれにせよJCS-ITCではモニターも合格しないレベルのインストラクションでした。
しかし、motivationの高い方ですし、秘めたpotentialも高いです。他ITCにインストラクション志願をしてくる前向きな姿勢も素晴らしいです。どこのITC所属でも、基本的な思いや目指す所は同じですから、当方としても機会あらば微力ながらも貢献できることはしていきたいと思っています。互いに切磋琢磨して学んでいきたいと思っています。

その方の所属TSのコース運営についても少しお聞きしましたが、かなりJCSとは異なった方式のようでした。
善し悪しは別として、同じAHAでも、色々なやり方があることを改めて教えて頂きました。自分にとっては、一つの学びです。

最近は自施設のコースにかかりっきりで、他の施設のコースにはなかなか参加できていません。視野が狭くなるのが心配です。
JCS-ITCの他施設のコースや、他ITCのコースも見学、参加しに行きたいとも思いました。

最高齢

先の教授先生の記事を書いて、思い出しました。そういえば、先月は、某大学循環器内科名誉教授、現某心臓系財団理事の超大先生がBLS-Rを受講されました。嬉しいことです(泣)。

大先生の年齢、なんと、80歳!!!

自分が経験したコースでは、最高齢!

80歳とは思えぬ程若々しく、強く速い胸骨圧迫もばっちり。びっくりしました。感動しました。

偉いヒトは、体力、気力が人並みではございません。

2年後、またBLS-Rでお会いできることを期待しています。
その前に、ACLS-Rで会えるか(笑)!?

循環器教授2

またまた久し振りの更新。

先週末はBLS、BLS-R、ACLS-Rを開催しました。
BLS-Rには、某大学の循環器内科教授先生が受講されました。JCS-ITCのコースとしてはもはや珍しいことではありません
今回も、看護師が教授先生のインストラクションしましたが、教授先生のアンケートではインストラクターを激褒め!花丸(笑)がつけられ、最高評価でした。いろいろな意味で嬉しいです(涙)!

AHAインストラクターは質の高さが売りですが、JCS-ITCは特にその辺のこだわりが強いITCです(と勝手に思っています(笑))。
教授先生にも堂々とインストラクションできるようになりたいコメディカルの方、連絡ください(笑)!


教授先生はその社会的地位の高さにも関わらず大変謙虚な姿勢でコースに臨んでおり、感心しきりです。手技も素晴らしいレベルでした。

2010年7月21日水曜日

Giants

久し振りに東京ドームに行きました。我がGiantsが、弱いものいじめでSwallowsをボコボコにしました(笑)。長野が大活躍です。わーい。



ドームは広いですが、観客席は狭いです。窮屈です。座り心地が超悪いです。
それなりの斜面を呈している2階席での観戦でした。後ろの列の人が、狭くて動きにくい中、持っていた飲み物をこぼしてしまい、私にかかりました。冷てー。わざとではないのですが、ついつい、ムッとしてしまいました。
その瞬間大変恥ずかしい思いになりました。まだまだ、修行がたりないということです。

2010年7月20日火曜日

CTOに対するRetrograde approachの定義

CTOに対するRetrograde approachは、様々なテクニックが乱立していて混乱してしまいます。定義を統一することを目指したsessionがありました。落合先生の提言は以下の表の感じです。subintimaとか、intima、trueとか、IVUS所見を含んだ定義は望ましくなく、それらとは独立した整理をしています。





Dilatation of CTO body には、balloonは勿論、CorsairなどのMicrocatheterやNnuckled wireも含まれます。

大変シンプルで分かり易いきがしました。

2010年7月18日日曜日

TOPIC2010終了。

TOPIC終了です。色々と大変勉強になりました。学んだことも多かったですが、感じたことも多かったです。
様々な先生方のpresentationを拝聴しました。皆さん経験豊かで、良きメッセージをお持ちなわけですが、presentation技術に大きな差があると感じました。
印象に残ったpresentationは、USAで活躍の前原先生です。CTO病変のangio、IVUS、CT、病理像の関連をお話頂きました。プロフェッショナルな態度で、理論的。分かっていることと分かっていないことを明確にし、clearな表現で非常に分かり易い。多くの先生は、presentation中はスクリーンを見ていたり、手元のPC画面を見ていますが、前原先生は、聴衆に目を配り、目で聴衆を惹き付けていました。講演内容も大変originalityに富んでおり、impressiveでした。たいしたものです。このCTOのセッション、大御所落合先生と、角辻先生、前原先生とそろった場は圧巻でした。世界を背負う活躍を期待します。

若手相手の教育的なセッションにも少し顔を出しました。日本の中堅所の先生方のlectureでしたが、、、、、、、、。全般的に、内容も、presentation skillも、needsに見合うものではなかったように思いました。若手interventinalistも欲求不満だったのではないかと思います。

何のpresentationもしていない自分が言うのもなんですが(笑)、更なるskill upが必要と感じてしまいました。

学会のたびに感じますが、最近は、日本の学会でも海外の先生方が多く参加され、英語でのdiscussionも普通に行われます。日本語でのpresentationもまだ行われてはいますが、ユニクロや楽天の世界が自分たちの日常にも降りかかってくるのはもうすぐです。

2010年7月16日金曜日

TOPIC2010初日 心配、Slender PCI!

恒例のTOPICです。大都会東京、渋谷、おしゃれなホテル、セルリアンで開催される心臓カテーテルに関する学会です。






近所での開催ですので、仕事を早く切り上げ夕方から参加しました。平日にも関わらず多くの参加者でにぎわっていました。
会場到着直後、とりあえず目の前で行われているセッションを拝聴しました。最近盛り上がりを見せているSlender PCIの、"Slender Video Live"。Slender PCIには以前より大変興味がありますので、食いつきました(笑)。会場内は立ち見が出る程の盛況振りでした。
途中からの参加ですので、なんとも言えませんが、見た範囲では、うーんという感じ。
有名な某先生のビデオライブでしたが、CTOへの5F PCI。5Fでおこなったからこそ不成功で終わる手技。6-8Fなら問題なく成功でしょう。うーん。
2nd sessionで中途6Fに切り替え成功しましたが、その手技後引き続き行った他枝病変へのPCI(これもCTO)では偽腔へのステント留置という雑な仕上がりのPCIでした。ガイドワイアー通過が、true-false-tureならまだしも、true-falseのままステント留置です。常識では考えられません。長期のpatencyはあまり期待できないのではないでしょうか。
ビデオ後のdiscussionも消化不良です。不成功のPCIを許容するような意見が多かったですが、説得力が全くありません。残念です。
患者さんのことを考えると、複雑な思いを抱かざるを得ません。"Slender"を否定するわけではありませんが、こんな手技を続け、また、こんな手技を許容するような議論を続けるようですと、未来は暗いのではないかと思ってしまいます。
ライブを行っている先生は一流の先生ですので、まだ善し悪しの判別がつくでしょうが、聴衆には若い先生方も大変多い会場でした。"Slender PCI"は若い先生の注目度が高いのでしょう。子供が大人の危険な遊びを真似すると、非常に問題があります。危ない。""Slender"の世界は危険と隣り合わせだと思います。Slender系の学会に参加するたびに同じような思いを感じます。Slenderの世界を応援するからこその心配事です。倫理的にもきちんとしたステップを踏んだ"Slender PCI"の普及を望みます。

お子様にとっては、現状ではSlenderPCIは、せめて非CTO病変に限定する方針が宜しいと思います。PCIにおいて、CTOは、やはり別物です。患者のことを本当に思うなら、個人的には、CTOは落合先生の主張通り、FA 8Fが最善と思っています。

2010年7月14日水曜日

UFOキャッチャー

先日、カテ室でUFOキャッチャーしました。

一個目




二個目





OptEaseというIVC filter(深部静脈血栓治療用の下大静脈フィルター)です。
いずれも10日程前に下大静脈に留置しました。今回、スネア(投げ縄みたいなものですね)を使って回収しました。

IVC filter自体は個人的にはあまり好きなデバイスではなく、なるべく使わないようにしていますが、回収できるのであれば良いですね。

野菜

最近行ったお店のお気に入りメニューです。




なかなか良い店で、早く再訪したいです。

野菜でも、肉でも、魚でも、なんでも、あまり手をかけず、素材本来の味を楽しむのが好きです。
写真手前に、ゴマだれ、塩、バーニャカウダ がありますが、個人的には殆ど使いません。
最近は、刺身食べるのも、醤油使いません。

日常診療で心臓病の方に対しては、減塩食(6g/日)を推奨しています。3g/日が理想のようですが塩分好き民族の日本人には無理でしょう。6gも難しい。

醤油等調味料を控えるのは、素材の味を大事にする以外にも、減塩という観点で、自分の身体のため、そして少しでも、患者の気持ちを理解しようかなという気持ちもあったりします。

2010年7月13日火曜日

アデホス使用の際には除細動器を用意しましょ

上室性不整脈患者の管理に関するACC/AHA/ECCガイドラインの幅の狭いQRS頻拍に対するアデノシン使用に関し、以下の記載があります。

「アデノシンにみられる副作用には, 心房細動の出現( 1-15 % ) がある。これは通常, 一過性であるが, 心室の早期興奮のある患者に
はとくに問題となるかもしれない。」



中年男性。動悸を主訴に来院。血圧120/70と保たれているものの、HR>200!はやっ!




初療を担当した後期研修医。アデホス10mgを急速静注。びよよーん。ちゃんとECGを流しながらの投与です。




めでたく、洞調律に回復。デルタ波があり、副伝導路の存在が示唆されます(早期興奮症候群、WPW症候群)。




と思った途端、RR間隔が不整になり、再度頻拍化、QRSは幅広くなり、、、、、





患者さんは眼球上転、意識消失、脈拍触知できず! 研修医は慌ててCPRを開始しました。胸骨圧迫を数回したところで、幸い、血圧は回復し、意識回復したそうですが、研修医はかなり焦ったそうです(苦笑)。
アデホスの副作用による心房細動が生じ、いわゆるpseudoVTになったのでしょうか。

副伝導路を有する患者さんに心房細動が生じた場合は、無秩序で極めて速い心房の興奮が副伝導を伝導し、極めて速い心室興奮を来たすことがあります。RR間隔が不整の、幅広いQRS頻拍を呈します。場合により突然死に至ることも有り得る、恐ろしい病態です。

pseudoVTが持続し、血圧が回復せねば、迷わずcardioversionです。

幅の狭いQRS頻拍にアデホスを使用する際には、除細動器を用意しておくことが重要です。QRSの幅が狭いから楽勝!、といってなめていては怖いことが起こることもあります。。

2010年7月2日金曜日

POP LIVE in Wakayama

日々やることが多くて首が回らない状態です。ワールドカップも重なり、究極の寝不足です。
それでも今日は当直の代休でした。わーい。でも寝て過ごす暇はありません。この代休を利用して、強行日程、朝4時起きで羽田関西空港経由、和歌山に来ています。目的はPOP LIVE !(笑)。なかなかシャレたネーミングですが、音楽のライブではありません。

「Physiology Oriented PCI Live Demonstration Course in Wakayama」の略です。




赤坂先生率いる和歌山県立医大循環器内科が主となって行うPCIライブです。
難易度の高い症例を、高い技術で成功させる通常のライブとは異なり、FFR等、狭窄の機能的評価によりPCIの適応やエンドポイントを決定する、他とは趣が異なるライブです。FFRの勉強のために、生まれて初めて和歌山の地に足を踏みいれ、初参加しました。
会場の大学は大変広く、きれいで、人は少なく、開放的です!要するに田舎です(笑)!

肝心のライブは、4症例のみと、症例数を絞りじっくりと吟味する趣向です。初めの3症例は正直、FFRの良さが活かしきれない症例で、しかもカテ技術も??という感じでしたが、4症例めは非常に印象的な症例でした。右冠動脈#3の75-90%の症例。シンチはequivocalですが、angio上は明らかなる有意狭窄で、RCA dominantで結構大きい。FFRは0.8台。ATP持続静注をどんどん増量し、かつ冠動脈注入も併用したり、hyperemiaにかなり気を使っても、やっぱりFFR0.79のボーダーライン。OCTで形態的評価を加え、赤坂先生は平然と、「PCIは控えて、薬物治療で対処。これが我々の通常のスタンスです」。

もちろん深いディスカッションの上での判断ですが、日本の、いや世界のインターベンショナリストで、90%狭窄を前にして、平然とワイヤーを抜いて保存的治療に移行できる人がどれくらいいるでしょうか。エビデンスに基づき、患者の為に、無駄なことはしない。患者に、循環器医に、医療経済に、やさしい判断です。
今回のこの症例の経過やディスカッションを拝聴しただけでも和歌山に来た甲斐がありました。
十分なHyperemiaが得られているのかを考慮することも大変重要なことが分かりました。

夜は、おいしい地魚たべました。メニューでたまたま見かけた和歌山名物(らしい)梅わさびも。刺身にあえていただきます。つーん!からい(涙)! 




そして、密かな第二の目的、マニア温泉を満喫(笑)。(密かに尊敬する人:郡司勇、松田忠徳(笑)) 



鉄分が多い、赤いお湯です。26度の少々冷たい源泉と、加温した40度程の湯船を交互にはいることが推奨されています。
お風呂の出口には、源泉が出てくる蛇口が設置されており、自由に飲んだり、タンクに入れて持ち帰ったりすることができます。大変良心的です。

明日も半日ですが、和歌山でお勉強です。

2010年6月25日金曜日

祝決勝T進出

やったー!

2010年6月15日火曜日

Japan!

韓国に続き、日本も頑張りました。松井が良いクロスを入れてくれました。本田も位置取りがよかったです。
前半終盤で足が止まりかかっていましたが、なんとか後半まで持ちこたえました。勝つことが大事です。

おめでとうございます。これで次も楽しみになりました。


2010年6月13日日曜日

CTO Club 2010

今回もCTO Clubは大変勉強になりました。慢性完全閉塞病変に対し、数々の治療法がありますが、CTO Masterの大先生方の多大なる努力、技術の進歩、デバイスの進歩などにより徐々に治療が標準化してきました。特に、各種ガイドワイヤー、Corsairの果たす役割は極めて大きいです。
勿論、まだまだvariationはありますが、概ねの流れとしては、

Antegrade approach
①Fielder XT等のtapered wire
②Wizard3g/Ultimate bros.3など少々固めのwire
③Conquest pro/Miracle12gなど更に硬いwire
④parallel wire technique
⑤IVUS guidance

④−⑤あたりでうまく行かない場合、Retrograde approachを考慮します。
①Collateral channnelが比較的まっすぐの場合、Fielader FC、コークスクリュー様であればXTやSion
②RetrogradeからCTOに進ませるべく、必要に応じ3g等に変更、場合によりConquest pro やMiracle6-12g
③Reverce CART(この辺はまだまだvariationがある)
④Externalization
⑤antegradeからballooning、stent


IVUS guideの重要性が強調されていました。様々な局面でIVUSをこまめに活用することが手技成功への一つの鍵とも言えます。
また、様々なな特性を有したガイドワイヤーを、その局面に応じてこまめに変更する必要があることも強調されていました。Conquestなどで硬いfibrous capを破ったら、すぐにまたsoft wireに戻す、といった" step down"が重要のようです。CTO Master 鈴木先生は、Conquestでは5mm以上進ませるな!とおっしゃていました。

CTO病変の病理学的な検討と各種imagingとの相関も興味深かったです。MRIが有用な可能性も指摘されていました。
その他、角辻先生のDonor Artery occlusionの恐ろしい話、その対処法などなど、興味深い話が多数ありました。復習して、理解を深めたいと思います。

2010年6月12日土曜日

Korean Team !

Congratulations on a fantastic victory !!!!!!!



2010年6月11日金曜日

CTO Club




今年も来ました、CTO Club
冠動脈のカテーテル治療、特に慢性完全閉塞病変に対する治療に特化する学会です。自分としては、最も楽しみにしているライブデモンストレーションです。
そういえば、昨年は参加できませんでしたので、2年振りの豊橋です。
一昔前は、単なるマニアの会でしたが、retrograde approachによる治療が確立されたこともあり、徐々に一般化されつつあるような気がします。とはいいながらも、治療対象となる症例は、通常であればCABGが当然といったものばかり。ちょっとおかしい(苦笑)。abnormalな世界に感化されずに、常に標準的治療を頭にいれつつ、良いところだけ吸収するスタンスで臨む必要があります。

今日は朝一番の新幹線に乗り、8:30の開会から参加、先ほど22時前まで参加していました。明日も7:30からのmorning sessionから参加予定です。楽しみです!

腕立て伏せ

当院は血気盛んな、初期研修医、後期研修医合わせて150人くらい勤務している、人材的には極めて恵まれている病院ですので、自分のような高齢医師(笑)が自ら胸骨圧迫する機会は極めて稀です。
最近、難治性VF症例がたて続いたせいか、こんな自分も胸骨圧迫する機会に恵まれました(笑)!

この日のために!、というわけではないですが、自らの健康のために半年くらい前から腕立て伏せを日々の習慣にしていました。この本を読んで以来、微々たるものでも日々続ける習慣を持とうという努力をしており、その一環です。



久し振りに現場で行った胸骨圧迫。腕立て伏せの効果のせいか、以前より疲労感を感じることなく、かなり強く!速く!押せたような気がします。
High Quality CPRの技術が必須な医療従事者としては、日々の腕立て伏せが必須!と感じた次第です。皆様、御検討を(笑)。


上記本、結構、良いと思います。行動を変える力を持っています。

2010年6月9日水曜日

夜間の高齢入院患者の転倒

高齢化社会で、当然高齢の患者さんの入院も増えます。不穏や、夜間徘徊などなど、管理に苦労することが少なくありません。
あってはならないこととはいえ、現実的には夜間の転倒もしばしばです。

消化性潰瘍にて入院中の高齢男性が早朝未明にトイレへ独歩、トイレで転倒しました。当直の後期研修医が呼ばれ、対応しました。意識状態初め、バイタルサインは大きな問題なく特に打撲や外傷はありませんでした。ただの転倒かと思いきや、少々息苦しい感じがあり、若干のSpO2低下も伴うとのことで、心電図を記録しました。




あらら、ST変化あり、、とのことで循環器の当直が相談されました。

ちょっといやな心電図ですね。2,3,aVFでST低下、aVR,V1-2でST上昇しています。
心エコーをしてみると右心負荷あり。造影CTを撮影してみると。。。。。やっぱり。






両側肺動脈に血栓を思わせる陰影欠損あり。肺塞栓です。





CTでも右心系拡大が分かります。
両側大腿静脈にも血栓がありました。バイタルサインは最低限保たれていましたので、酸素、ヘパリン、IVC filterで対応しました。

今回のケースは、高齢者のただの転倒ではなく、肺塞栓発症に続発した心拍出の低下によりふらついて転倒したものと推測されます。
高齢者の転倒に対応するとき、またか、、、という気持ちで、いい加減になってしまうことも少なくないと思います。いつでも慎重さをもって対応しなくてはいけないという、教育的には良いケースでした。
後期研修医の先生、よく心電図とってくれました。命の恩人です。

2010年6月8日火曜日

手動式除細動器の安全確認

心室細動に対して手動式除細動器で除細動する場合、安全確認をします。一般的によく行われている方法として「私離れています、あなた離れています、皆離れています!」と叫んで、放電、が挙げられます。AHA ACLSプロバイダーマニュアルには、この「警告の合図」の一連の作業は5秒以内に終えるべきと書いてはありますが、実際は5秒を超えてしまう場面も多々目にします。
除細動の成功率を上げるために、最後の胸骨圧迫から放電するまで、5秒以内にする、との推奨がなかなか守れないのが現状と思います。

最近、心室細動への手動式除細動器を用いて除細動する際に、自分が実践している方法はこんな感じです。
「胸骨圧迫以外の人は皆離れて下さい!」と警告し、離れていることを確認します。胸骨圧迫はまだ継続しています。パドルを当てて、充電します。充電完了したところで、「胸骨圧迫離れて下さい!」と言います。胸骨圧迫が離れた途端に放電します。そしてすぐに胸骨圧迫再開してもらいます。これですと、最後の胸骨圧迫から放電するまで2秒以内、Handsoff timeは3秒程度も余裕です。もっと短くすることも可能です。もちろん、パッドを使えばよりやり易いです。

安全性も含め、実際の現場で行っても何の支障もないので、先日ACLSコースでそのように教えてみました。皆さん、いとも容易に上記くらいのtimeを打ち出せますし、やっぱり安全性も問題ないように思います。

今のところ、この方法を続けようと思っています。

少数精鋭

6/5-6は自施設でAHA ACLSを開催致しました。18人3stationでしたが、人不足で大変疲れました。
これまで我々周囲のコースは比較的インストラクターを多めに配置しお互いpeer reviewして、切磋琢磨してきました。少ないインストでの開催には不慣れでして、今回は上記受講生に対し、ACLSインスト3人、BLSインスト3人でぎりぎり開催しました。
個人的には、前日の会場設営も途中まで一人でやって、コースにおいても、各スキルステーション全参加は勿論、コース概要、BLS/ACLSサーベイ、ACS、Stroke、チームダイナミクスといったDVD講義、心電図補講も全部自分でやるはめになりました。
弁当手配や、飲み会場所探しもね(笑)。
さすがに、1日目の最後のVT/VFや徐脈/PEA/Asysでは集中力が散漫になり、自分の体力の限界を感じました(笑)。

それでも、少数精鋭で皆さん頑張ってくれて、結果的には素晴らしいコースになり、受講生のスキルアップは勿論、満足度も大変高かったので、良かったです。有り難うございました。

本日火曜日ですが、ようやく疲れが取れてきました(笑)。でも今日は当直です(がーん)。

我々周囲では、BLSはともかく、ACLSの新規インストが少ないことが一つの問題です。

2010年5月31日月曜日

独立行政法人

先日、所用で大阪の国立循環器病センターに行きました。臨床に、研究に、大活躍している先生方が大勢いる、大した病院です。
国立循環器病センターは、ナショナルセンターだったわけですが、独立行政法人化して、名前が変わったんですね。知りませんでした。

国立循環器病センター→独立行政法人国立循環器病研究センター

になったそうです。

へーっとおもって、他のナショナルセンターをちょっと見てみると、やっぱり変わっているんですね。

国立がんセンター→独立行政法人国立がん研究センター

国立成育医療センター→独立行政法人国立成育医療研究センター

国立国際医療センター→独立行政法人国立国際医療研究センター

国立精神・神経センター→独立行政法人国立精神・神経医療研究センター

国立長寿医療センター→独立行政法人国立長寿医療研究センター


研究が大事みたいです。

国立病院機構とは別組織なんですね。

2010年5月30日日曜日

剣状突起

さて、久しぶりの更新です。

心肺蘇生教育の世界に、新たに興味を持ち、新規参入されてくる方がそれなりにいらっしゃいます。有り難いことです。ベーシックで当たり前のようですが、うまく答えることができない質問を受けることが時々あります。

例えば、胸骨圧迫の手の位置についての、非常にベーシックな質問。

AHAのプロバイダーマニュアルには、乳児のCPRでは「剣状突起は押してはならない」と明記されていますが、成人のCPRでは、明記はされていません。この違いは何なのでしょうか。

うーん。当たり前のような質問ですが、考えだすと、結構深いです。

まず成人について。
乳頭間の正しい位置取りをすれば剣状突起を押すことは有り得ませんが、なぜ剣状突起を押してはいけないのかという問いに対しては、CoSTR、ガイドライン、プロバイダーマニュアルには記載がありません。そもそも、CoSTRには、「成人CPRにて、手をおく位置についての満足できるエビデンスはない」とあります。現在、推奨されている乳頭間の手の位置も明確なエビデンスのないコンセンサスと言えます。極論を言えば、現在の推奨の手の位置が、剣状突起近くの圧迫よりも明らかに優れているというエビデンスはないわけです。
現在の推奨の手の位置と、剣状突起近くの手の位置で、腹部臓器損傷の頻度が本当に異なるのか、分かりません。
AHAを離れれば、Case report等でCPRによる腹部臓器損傷の報告もありますので、避けた方が良い気がしますので、なんとなくそのように指導してきましたが、いざ客観的に調べると、意外とクリアではありません。

乳児については、上記のようにBLSプロバイダーマニュアルには「剣状突起は押してはならない」と明記されています。理由については記載がありません。成人より乳児のほうが臓器損傷が生じ易い印象がありますが、そんな報告もあるのでしょうか。乳児には記載あり、成人には記載がないのはそのためなのでしょうか。
CoSTRには、「小児では胸骨の下3 分の1 の圧迫が胸骨中央に比べ高い血圧を生み出せる」とも書いてあります。
この文献が出典みたいですが、小児と乳児が対象のようです。乳児の数は僅かですが、この文献が根拠のひとつとして乳児の胸骨圧迫の位置が”乳頭間線直下”というやや下の推奨になっているのでしょうか?。(ちなみに、小児が成人と同様の手の位置なのは、シンプルにすることで、教育的効果を上げるためだからでしょうか?)乳児は成人よりもやや下を圧迫することになりますから、その分剣状突起に近くなり、その結果、「剣状突起は押してはならない」の記載が敢えて書かれているのでしょうか。うーん、分からないことだらけです。

恐らくは、これまでも様々なところで議論されていることとは思います。
良い答えをご存知の方は御教授下さい。

2010年5月21日金曜日

Cardiac Contractility Modulation

東京女子医大循環器内科の松田直樹先生のCRTに関するご講演を拝聴しました。
心不全患者治療に関する新たな植え込み型デバイスとして、Cardiac Contractility Modulationなるものを御紹介頂きました。Cardiac Contractility Modulationとは、左室心筋の絶対不応期に強い電気刺激を加えることにより心収縮力が増強される現象だそうです。機序としては、心筋細胞筋小胞体からのカルシウム放出を増加させるためのようですが、まだ分かっていない面も少なくないようです。
へえ、初めて知りました。
すでに臨床応用されており、今後更なる発展、普及が望まれます。
強い電気刺激が必要であり、電池消耗が激しいので定期的な頻回充電が必要だそうで。その度にデバイスが植え込まれていることを実感してしまうし、依存感を感じそうですね。仕方ないけど。

Supersexy CPR

とある方から、こんなサイトを御紹介頂きました。

http://supersexycpr.com/index.html

WATCHをクリックすると動画が見られます。
high quality CPRじゃないなーと思いながらも、ついつい見てしまいます(笑)。

2010年5月18日火曜日

エピ

2010年5月15日土曜日

I think X,because Y. For example,Z. 続き

先の記事で、

I think X,because Y. For example,Z.

を推奨しましたが、それではBLSの実技試験が不合格だった場合はどうしましょ。

「不合格です!チェックリストが埋まりませんでした!・・・・・」

はあまりにきついでしょうか(笑)。日本人としては。。。。

その辺は、臨機応変に対処しましょう。

意図的な練習

ドクター・ヴァンスの 英語で考えるスピーキング

先の記事でのこの本の紹介ついでに、この本で気に入った一節の御紹介。

「人を卓越させてくれるタイプの勤勉さとはいったい何でしょうか?それは、「意図的な練習」です。「意図的な練習」というのは、毎日単純にたくさんのゴルフボールを打つという勤勉さとは異なります。それは、8番アイアンを使って300回打ち、その80%は、ピンの6メートル以内に寄せるというはっきりとした目的を持って、各ボールを打った結果を常に考察、調整しながら、毎日数時間練習するというものです。つまり、一般論として定義すれば、「成績の向上を明確に意図し、個々の結果についてのフィードバックを自分に与えながら、自分の力量を超えた目標に到達しようとして行う相当な量の反復行動」となります。」(P219)


徒に繰り返したり、積み重ねたりすることは、必ずしも勤勉とは言えないわけですね。

これも心肺蘇生教育にも活かせる概念ですね。単にBLS手技を繰り返しやらせるだけでは効果的ではないかもしれません。「意図的な練習」を心がけることが重要ですね。

I think X,because Y. For example,Z.

AHA BLS for HCPの最後の成人1人法CPRの実技試験が終わり、受講生へのフィードバックと合否の結果を伝えます。

「反応の確認、救急システムの立ち上げ、AED要請、できていましたね。気道確保も出来ていて、呼吸の確認も7秒でした。人工呼吸も2度胸が良く上がっていました。1回約1秒で、10秒以内にできていました。脈の確認も6秒でした。5秒以上10秒以内にしっかりできています。胸骨圧迫30回は17秒でできていました、、、、、、、。ということで、チェックリストは全て埋まりました。合格です!命が救えますね!」

このように、受講生とチェックリストの項目を一つ一つ確認の上、最後に結論の「合格」をお伝えするインストラクターは少なくありません。自分もかつてそうでしたが、先輩インストラクターに指摘されました。

各項目のフィードバックの間、受講生は、自分の合否が分からず、大変不安になるかもしれません。ですから、実技が終わったら、

「合格です!スキルチェックシートの項目が全部埋まりました!これなら命が救えます! 反応の確認、救急システムの立ち上げ、AED要請、できていましたね。気道確保も出来ていて、呼吸の確認も7秒でした、、、、、、、」

このように結論を先にお伝えした方が、分かり易いし、受講生も安心することでしょう。

これと少々関連した事柄がこの本に出ています。

ドクター・ヴァンスの 英語で考えるスピーキング





「効果的にメッセージを伝えるための考えの構成方法は、文化によって異なります。一般的に、英語の考えの構成法が直線的につながっていくのに対して、日本語の場合は、同心円の外から内へ向かうなどと言われます。」

なるほど。例えば、こんな感じです。

日本人:A(理由)という要素があり、さらにB(理由)です。例えば、、、、。従って私はC(結論)と考えます。

アメリカ人:私はC(結論)と考えます。なぜなら、A(理由)という要素があり、更にB(理由)だからです。例えば、、、、。

アメリカ人のような表現(I think X,because Y. For example,Z.)の方が、クリアで伝わり易いわけです。
「合格です(結論)。チェックリストが埋まりました、人が救えます(理由)。反応の確認は、、、、(例)」ということになります。

この本、英語の勉強の本なのですが、上記のようなコミニュケーションスキルなどにも踏み込んでいたりと、なかなか有用な本と思います。

まあ、本日のこのブログ記事の構成自体、結論が後に来ていて、日本人的ですよね(笑)。

2010年5月12日水曜日

また幅広いQRS頻拍にアデホス

動悸で来院した高齢男性。意識、血圧は問題ありませんが、頻脈。循環器後期研修医が12誘導心電図を記録したところ、どきっ。



自他覚症状は安定しており、安定した幅広いQRS頻拍。HR200bpm程。一般的には、幅広いQRS頻拍はVTと考え対応することが安全です。この方、高血圧性心不全の既往もあるようで、そのような背景を考慮すると、、、、やっぱりVTの可能性が高いかもしれません。
ただし、以前の心臓超音波検査によると左室収縮能は良好のようです。
非循環器医なら、酸素、点滴して除細動器を用意しつつ循環器医コンサルテーションでしょう。
不幸にも、循環器医がいない状況なら、アミオダロン点滴でしょう。同期下電気的カルディオバージョンも有力な選択肢です。

以前の心電図を見たいところです。幸いありました。



洞調律時と、頻拍時の四肢誘導の極性が変わっていません。循環器医としては、上室性頻拍の可能性が高いと疑うわけです。
試しに迷走神経刺激手技としてValsalva手技を試みてもらいましたが、反応はありませんでした。
そこで、アデホス(ATP)を投与してみたところ、、、



粗動波様のものが見えました。
やはり上室由来の頻拍、心房粗動1:1伝導であったようです。アブレーションを考慮すべきでしょう。

ということで、研修医数人がいる前で、循環器後期研修医が、幅広いQRS頻拍にATPを投与しましたが、非循環器医はすべきでなく、まねしちゃいけません、これは循環器医ならではの対処であることをお伝えしました。


関連記事

http://jblog20090211.blogspot.com/2009/11/qrs.html

http://jblog20090211.blogspot.com/2009/10/qrs_11.html

2010年5月10日月曜日

カテ室のちBLSコース

先週末のBLSの日、早朝5時頃から急性心筋梗塞の緊急カテでした。徐脈、ショックの高齢男性。



2,3,aVFでST上昇しており、下壁領域の急性心筋梗塞。症候性徐脈、完全房室ブロックを合併していました。初療に携わった後期レジデントがTCP装着するもうまくペーシングできず、それにもめげずアトロピン投与、でも無効、それにもめげずドーパミン点滴!そんなことしつつカテ室に搬入。症候性徐脈の対処としては、スタンダードですね。さすがです。

経静脈ペーシングを挿入し、それでもショックなのでIABPも入れてCAG。右冠動脈閉塞で、型通りPCI施行しました。
PCI中、VFになりました。



VFの12誘導心電図は、記録できる機会は多くはないですよね。貴重な記録です(笑)。
電気的除細動を施行。すぐさま、胸骨圧迫!!言わなくても、すぐに圧迫してくれる若者は勿論AHA BLSプロバイダー!!!!!
先日のブログ同様、除細動は出来たものの、すぐには循環が戻りませんでした(PEA)。2分弱胸骨圧迫したでしょうか。カテ中ですので当然、動脈圧ラインは確保できていますから、胸骨圧迫中の動脈圧の推移は目の当たりにできます。胸骨圧迫が途絶えた時の圧の出ない状態、胸骨圧迫による圧の上昇が良く理解できます。除細動直後の胸骨圧迫の重要性をまたまた実感できました。循環器医はこんなことをたびたび経験しますので、これを周りに伝えないといけないと思いました。

この方は、2分弱のCPRを経て、自己心拍再開し、無事にPCIも終了し、経過良好です。

BLSトレーニングの重要性や、教育内容の妥当性の確認など、色々と感じた良き時間でした。
でも、寝不足のままBLS-R、BLSと1日こなし、眠かった(笑)!

2010年5月9日日曜日

循環器教授

昨日のBLS-Rに、某大学の循環器内科の教授先生が受講されました。JCS-ITCならではかもしれません? 謙虚な態度で紳士な先生でした。
担当したインストラクターは、歯科領域のコメディカルの方。緊張していたかもしれませんが、客観的には、循環器教授相手に臆すること無く、堂々としたインストラクションを展開していました。コメディカルの方の、教授先生への医学的分野に関する指導、、、一般的にはなかなか目にしない光景かもしれません。心肺蘇生教育ならではでしょうか?いずれにしても、そのインストラクターにとっては、大変自信になったことと思います。アンケート結果も良かったですし。

皆にとって

昨日はAHA BLS for HCPを開催。午前 BLS-R、午後BLSでした。コース自体も良質なもので、受講生にも大変喜ばれました。
一方で、今回は多くのインストラクター候補の方々がスタッフ参加して下さり、コース運営をよくお手伝いして頂きました。感謝申し上げます。せっかく参加頂いたので、目指せインスト!ということで、少しでも多くのことを学んで帰ってもらいたいと思っています。今回は参加インストラクターも数的に余裕があったため、手があいているインストラクターの方々が、スタッフの方々を熱心に教育してくれました。インストラクターの方々にも感謝申し上げます。

受講生、インスト、スタッフ、皆にとって、有意義な1日だったと思います。

15:2

この記事に対して、t.aさんから大変鋭い御質問を頂きました。

「救助者が二人の場合、15:2が『30:2ほど冠灌流圧を維持できない可能性がありますが、呼吸回数が多い分血液の酸素化は良好になり、トータルとしては呼吸原性心停止(小児、乳児)にはより良く働くことが期待され』るということは、救助者一人の時も15:2がよいと考えられるのでしょうか?」


呼吸原性心停止に対する救助者1人によるCPRにおいて、15:2と30:2の優劣については、明確なエビデンスはないと思っています(どなたかご存知でしたらご教授ください)。
一方で、新生児を除く各世代(乳児、小児、成人)の1人法CPRが30:2で統一されている理由は、(胸骨圧迫を増やす以外に、)教育が簡単になり、技能保持を促進するためとCoSTRには記載されています。

従って、t.a.さん御指摘のように呼吸原性心停止に対する1人CPRでは、15:2のほうが優れている可能性はあるかもしれませんが、より多くの人にCPRを行ってもらうことを目指して、シンプルに30:2としているようです。

訂正すべき点があれば御指摘の上、御指導のほど宜しくお願い申し上げます。

怒らないこと

新しい本ではないのですが、いろいろなブログ等で紹介されている本です。

怒らないこと―役立つ初期仏教法話〈1〉 (サンガ新書) (新書)



題名からして、なかなかのインパクト。”怒り”というテーマだけで1冊の本を書いてしまう、大変マニア?な本。一貫して怒ることの愚かさを説いています。日々の生活の中で、”怒り”を感じてしまうことはたびたびありますが、その度にこの本を思い出します。ですから、最近は怒りません。いつまで続くかわかりませんが(笑)。怒っている人を見ると、気の毒になってしまうようにもなりました。
自分にとっては、なかなか影響力の大きい本でした。頭にきちゃうことが多い方、御一読をお勧め致します。

2010年5月7日金曜日

とある質問 3

心停止時のCPR2人法で30:2(成人)、15:2(小児) と人工呼吸の頻度が異なっていたものが、挿管されると"6〜8秒に1回"と同一になるのは何故?

以下のように考えていますが、良い御意見有る方はご指導下さい。

高度気道確保がなされている状況下の換気回数(6-8秒に1回)は、静脈還流と酸素化(+換気)のバランスに基づいて設定されていると思われます。
高度気道確保がなされていない状況下のサイクル回数(30:2、15:2)は、冠灌流圧と酸素化(+換気)のバランスに基づいて設定されています。
従って、"30:2や15:2のサイクル"と、"高度気道確保下の換気回数" はともに循環・呼吸動態のバランスを考慮したものではありますが、微妙に異なった視点である、とも言えます。

高度な気道確保がなされている場合、
絶え間ない胸骨圧迫で、高い冠灌流圧が維持できます。
換気も6-8秒に1回行うことで、過換気による静脈還流低下を防ぎつつ、(心停止状況下における)可能な限りの酸素化が期待できる、それは成人でも、小児(乳児)でも同様、ということと思われます。
(成人でも、小児でも、)CPR中の心拍出量は正常値のほぼ25-33%(GL P29)で、肺への血流は実質上低下しており、そのため1回換気量と呼吸数が正常値より低くても適正な換気・血流比を維持でき(GL P28)、6-8秒に1回行うことでこれをまかなうことができると思われます。


ちなみに、非心停止時にも換気回数は5-6秒に1回(成人)、3-5秒に1回(小児) と異なっています。非心停止患者への挿管後の管理はBLS、ACLSコースを逸脱します。参考までにガイドライン2005(P214)には、非心停止小児に高度気道確保した後の人工呼吸は12-20回/分と記載されています。
PALSプロバイダーマニュアルの『蘇生後の管理』の記載によると、蘇生後の人工呼吸器の呼吸数の初期設定は 乳児:20-30回/分、小児:16-20回/分、思春期:8-12回/分 と年代によりやっぱり異なります。


ご指導の程宜しくお願い致します。

とある質問2

2人法CPRにおいて、小児(乳児)と成人では胸骨圧迫と人工呼吸のサイクルが異なってきます(30:2、15:2)。15:2では十分な冠灌流圧がえら得ているのだろうか。また15:2 5サイクルで役割交代との記載もあるが、その場合、冠灌流圧はどうなるのか?といった疑問が、とあるMLで提示されました。(小児2人法は15:2で行いますが、役割交代は"2分毎"とAHAは推奨しています。)

以下のように考えていますが、良い御意見有る方はご指導下さい。

高度気道確保がなされていない場合の胸骨圧迫と人工呼吸のサイクル(30:2、15:2)は、循環(冠灌流圧)と呼吸(主に酸素化)のバランスに基づいて設定されています。
明確なエビデンスは無くbestとは言えないものの、現状でbetterなバランスと考えられています(コンセンサス)。
即ち、
15:2では、30:2ほど冠灌流圧を維持できない可能性がありますが、呼吸回数が多い分血液の酸素化は良好になり、トータルとしては呼吸原性心停止(小児、乳児)にはより良く働くことが期待され、
30:2では、15:2ほど酸素化は良好にはならない可能性はあるものの、より高い冠灌流圧を維持することができ、トータルとして心原性心停止(成人)にはより良く働くことが期待される、ということです。
5サイクルでの役割交代(頻繁な交代)は疲労が緩和される分胸骨圧迫の質の維持には有利かもしれませんが、交代による胸骨圧迫の中断が生じるとすると冠灌流圧維持には不利に働きます。この状況下での冠灌流圧の維持については、救助者2人各人の技術と、2人のコンビネーション次第としか言いようがない気がします。当たり前のようなコメントになってしまいました

とある質問

あるAHAインスト系MLで出た質問です。
「いつ倒れたか不明な意識・反応のない「小児」を発見した場合、CPRでは「有効な人工呼吸」を2回行なうわけですが、もしも実は窒息だった場合、息を吹き込んでも胸が上がらず、何度も人工呼吸をするということが起こりうると思います。窒息を疑われる状況が何か見られればよいのですが、状況が全くわからない時、2回、3回と息を吹き込んでも胸が上がらない時はどうすれば良いでしょうか。」

心肺蘇生中の30:2の"2"の人工呼吸は、胸骨圧迫中断を最小限にすべく10秒未満で行うことは良く理解されていることと思います。
心肺停止の確認の際の"初めの”2(+α)回の人工呼吸についても、10秒以上かけてはいけないとAHA BLSインストラクターマニュアル「重要な手技の解説」には記載されています(これについては、プロバイダーマニュアルには明確な記載がないように思います)。
従って、いつ倒れたか不明な意識・反応(、呼吸)のない「小児(乳児)」を発見した場合、有効な人工呼吸を行う努力を2−3回行い、胸が上がっても、上がらなくても、10秒を超えないうちに次のアクション、即ち脈拍の確認に移ることでよろしいかと思います。10秒未満ですから、人工呼吸の努力も恐らく3回どまりまででしょう。
脈拍が無ければCPRです。ACLSプロバイダーに引き継ぐまで、通常のCPRです。CPR中も人工呼吸時に胸が上がらないのであれば、胸骨圧迫中断10秒未満の原則を守る範囲内で人工呼吸を複数回行い2度胸を上げる努力をします。この際、窒息を強く疑うのであれば、気道確保のたびに口の中を覗いて異物の有無を確認する、というオプションは有りかと思います。ただし、胸骨圧迫中断は10秒未満です。
脈拍があれば、人工呼吸のみということになりますが、どうしても胸が上がらず、かつ窒息を強く疑うのであれば、反応のない窒息傷病者への対処に準じて"CPR"を行っても良いと思います。

こんなふうにお答えしてみましたが、訂正すべき点があればご指導お願い致します。

2010年5月2日日曜日

最近

最近は、突然の高度房室ブロックで、TCP作動させなければほぼ心肺停止で痙攣してしまうような方や、40代なのにボロボロ3枝病変のSTEMI、ショックで搬入された方、A型急性大動脈解離で心タンポナーデ、ショックの方、などなど重症な患者さんが多く搬入されてきます。救命センター、循環器、心臓血管外科、などなど複数科で協力しながら良き治療が提供できています。
4月から入った研修医の先生方にとっては、ちょっと難しい症例でしょうが、頑張って勉強してもらいましょう。

2010年4月27日火曜日

J Walk

J Walkといえば、かつて、" 〜夏♪♪♪"、、なんて歌で一世を風靡したJ-POPグループを思い出しますか?僕も大好きで、カラオケでも良く歌いました(笑)。
でも、お薬でつかまっちゃったし、もう、忘れてください。

今は、J Walkといえは、これです(笑)。

正確には、"j.WALK"みたいです。

join the WALK(Wound-care And Limb-salvage coalitation in Keihin)


先日のJETで、済生会横浜市東部病院平野先生の熱いプレゼンテーションに心打たれました。
糖尿病を初めとする末梢血管疾患、下肢血管病患者さんに対する集学的治療に関する活動です。

足の血管が狭窄、閉塞して、足がくさっちゃうんです。
その治療は一筋縄にはいきません。血流改善のための血行再建、これとて、循環器内科、放射線科、血管外科、、など複数科の協力が必須です。虚血が進行し、皮膚変化があらわれれば皮膚科の関与もあり得ます。壊疽が進行すれば、形成外科、下肢切断が余儀なくされれば、整形外科、幸い良くなれば、再発予防で、当然糖尿病内科など。医師以外にも、看護師によるケア、栄養士や、検査にたずさわる検査技師、、、、、、関わる方々を挙げればきりがありません。

済生会横浜市東部病院では、平野先生の献身的な姿勢により立派なチームが形成されているようですし、それでも不足している面については、神奈川周辺による地域連携”J Walk”により、難治な患者さんを救肢、救命しているそうです。

j.WALKを活用した、涙が出るような、良いお話も披露してくれました。

本当に素晴らしいです。このコンセプトが全国に広がるとよいですね。

2010年4月26日月曜日

大動脈解離へのEVT

意外と多い急性大動脈解離。

Stanford A型は原則外科的加手術。

Stanford B型は、

合併症がなければ薬物加療。
合併症があれば外科的手術。

合併症とは即ち、破裂か、虚血。

これが、今現在のスタンダード。

Stanford A型の外科的加手術、多くの場合、異論はありません。

Stanford B型合併症なしなら薬物加療、これも異論はありませんが、慢性期に瘤拡大を来せば外科的加療に移行します。ところがどっこい、この成績が悪い。すこぶる悪い。なぜ悪いか?瘤が広範かつ著明に拡大するから。ならば、拡大する前に、対処すれば良いのでは?
拡大しやすいのは、胸部にエントリーがある症例、急性期に40mm以上の拡大がある症例。このような症例に、亜急性期にエントリー閉鎖でステントグラフトしちゃえば良い。なるほど。

B型で、合併症あれば,緊急ステントグラフト、これも症例によっては良き選択枝。特に虚血の場合は、エントリーにステントグラフト+閉塞部位にfenestration(+fenestration後も狭窄残ればステント)。

先日のJETでの、森之宮病院の加藤先生の大動脈解離へのステントグラフト治療の講義には感銘を受けました。

心血管系疾患を日々扱っている医師としては、患者へ少しでも良き治療を施すために、身につけなくては行けない技術かもしれない!、と思ってしまいました。

2010年4月25日日曜日

第3回Japan Endovascular Treatment Conference(JET)

六本木ヒルズ(うふ)で第3回Japan Endovascular Treatment Conference(JET)が開催されています(4/23-25)。




23日金曜日から参加するつもりでしたが、日常業務が立て込み断念、本日24日土曜日からの参加となりました。頚動脈、腎動脈、大動脈、下肢末梢血管、、、、全身の血管病に対する血管内治療を主体とする学会です。治療技術や各種デバイスの進歩には目を見張るものがあります。日々進化しています。大変有意義な時間を過ごさせて頂き、感謝感謝です。
ただ、心配なのは、その治療適応です。仮にも"学会”のLive demonstrationなのですが、治療適応に疑問が残る症例が少なくありません。腎動脈狭窄、腹部大動脈瘤、下肢動脈狭窄、などなど、至適な治療対象とは思えない症例への治療を行っていました。
腹部大動脈瘤のビデオライブでは、慈恵の大木先生が鋭い指摘をしており、約40mmと決して大きいとは言えないような瘤で、しかも屈曲病変でステントの至適病変ではない症例、しかもしかもendoleakが残るなど完璧ではない仕上がりな治療に対して"犯罪行為”、"マスタベーション”とバッサリ切っていました。one straight lineが確立されている状態での更なる下腿血管へのEVTに対してはその治療への意義の無さを理論的に説明した後、”患者にとっては何の利益も無い、時間の無駄、術者にとっては趣味だからいいけど”(苦笑)。独特の大木節ではありますが、単なる暴言ではなく、理詰めの意見で、説得力がありました。以前、大木先生は自分のことを”インターベンション界の良心”と表現していましたが、その通りかもしれません。表舞台の学会、Live demonstrationという舞台でさえ、こんな感じですから、日々の臨床ではもっともっと不適切な適応での治療が行われていることは間違いありません。雑誌の症例数ランキングを重視するようなC県の某病院は驚愕するような黒いインターベンションを施行していることは皆知っています。患者への不利益、医療財政圧迫などにもつながります。現在の医療崩壊を助長している一つの因子とも言えます。
低侵襲な治療を拡大、普及させることは大変重要なことですが、あくまでも患者の生命予後やQOLを改善させる為に行うことであることを、常に思考の中心に位置づけていたいと改めて思いました。

2010年4月21日水曜日

カテ室で

心臓カテーテル室での話。
重篤なAMIなどの緊急カテの場合は除き、何らかの原因でVT、VFが生じた時でもすぐに電気的除細動を施せますので、復調直後に循環もすぐに回復し、胸骨圧迫を引き続き要することは稀です。ACLSインストラクターとしては、通常のアルゴリズムの通り、カテ室内でも電気的除細動の後はすぐさま胸骨圧迫をするよう推奨していますが、ほとんどの場合はすぐに止めることになります。

先日、PCI中にVFが生じました。十数秒のうちに電気的除細動を施し、すぐに胸骨圧迫をしてもらいましたが、(通常のACLSのプロトコールを逸脱しますが(苦笑))一瞬胸骨圧迫を止めると、除細動は出来ているものの圧は出ていなくて、なんとPEAでした。汗!。胸骨圧迫を継続!。動脈圧ラインでは収縮期圧ですが、100mmHgを超えるほどの圧を確認でき、恐らくは有効であろう良き胸骨圧迫を若者がしてくました。勿論AHA BLS,ACLSプロバイダーです! 胸骨圧迫をしていない時に冠動脈造影をしてみるとほとんど流れが確認できないものが、胸骨圧迫をしている時に造影してみるとそれなりに流れています。当たり前ですが、胸骨圧迫の有用性を視覚的に確認したような気分になりました。数分間の胸骨圧迫、アドレナリン1mgIVで、自己心拍は再開し、その後は問題なく経過しました。

ACLS-RのDVDにも解説されているように、集中治療室等モニタリングが充実しているような環境では通常のACLSアルゴリズムから逸脱する場合が当然あり得ます。カテ室もその一つです。しかしながら、スタンダードを抑えた上での対応であるべきであることを新たに認識しました。
胸骨圧迫の重要性も改めて実感しました。

PAT,PSVT

つまらない話なのですが、へえ、と思ったこと。PALSのプロバイダーマニュアルを読んでいて、目についた一文。
「上室頻拍(SVT)には、古い用語として、発作性心房頻拍(PAT)や発作性上室性頻拍(PSVT)が含まれる」

PATとか、PSVTって、用語としては過去のもの? 現役かと思ってました。

2010年4月20日火曜日

昨日のtachycardia

高齢女性。軽い動悸のみで症候は乏しいが、頻脈あり、とのことで他院から転送されてきた方。他のバイタルサインは問題ありませんが、御指摘のようにHR150bpm程の頻拍。






初期研修医と対応。研修医に質問してみました。
「安定したQRS幅の狭い頻拍ですね。どんな不整脈が鑑別に挙がりますか?」
「・・・・洞性頻脈!」
「他には?」
「・・・・・・・・・・・」

この初期研修医、昨年循環器科をローテートしているし、循環器科が行った不整脈の勉強会にも参加しているはずなのですが。。。。
narow QRS tachycardiaの鑑別、対応法は十分にお伝えしているつもりなのですが、なかなかご理解頂けていないようです。
優秀な研修医が集うとされている当病院。指導医としての伝え方が不十分なのでしょう、きっと(苦笑)。反省。

洞性頻脈の他の鑑別、上室性頻拍(PSVT)、心房粗動(2:1伝導)といった代表的鑑別を解説した後、ATP(アデホス)を急速静注。
鋸歯状波が明確となり、AFL2:1伝導と結論し、ヘルベッサーにて心室応答コントロールの方針に至りました。

教育とは難しいものです。
先日読んだ本の一説。
「一度しか読んだり聞いたりしたことのないものは、ほとんど覚えていられない。だから、「少数のものを何度も」学ぶべきであり、「多数のものを一度、二度」学んでも意味がない。」
情報過多が、知識の実践の障壁になっているとのことです(なぜ、ノウハウ本を実行できないのか ケン・ブランチャード+ポール・J・メイヤー+ディック・ルー著)。




医療の発展とともに”情報過多”が余儀なくされる現状。研修医も、勿論我々ベテラン(苦笑)とされる年代の医師も、なかなか苦労の連続です。

どの科に進んでも遭遇しうる循環器疾患の初期対応。
ベーシックなことを繰り返しお伝えし、身につけて頂く。これが自分の重要な業務の一つと思っています。
この分野においては、AHA ACLS の教育スタンスは、大変有用なmodalityと思っています。