2009年10月31日土曜日

予想外

当直中、胸部絞扼感、呼吸苦で救急搬送された中年女性。バイタルサインは安定。心電図を記録してみると僅かなST低下を認めるも、著明な所見は認めず。


左回旋枝の急性心筋梗塞?すぐに心エコーを施行してみましたが、左室壁運動異常は明らかでなく、左室収縮は大変良好でした。?。このような時は大動脈解離や肺塞栓といった鑑別
が頭に浮かびます。
と思ったら、「先生、胸が苦しくなった時から左腕が動きづらいんです」との訴えあり。診てみると確かに不全麻痺がありそう。下肢は客観的にはほぼ正常に近いくらい動きますが、聞いてみると左足も少しへん、、と言います。客観的には発語もスムースですが、自覚的には少ししゃべりづらい感じもある、と言います。
脳卒中じゃん?。tPAも考慮しなきゃ。まずは頭部CT撮らないと。と思い、放射線当直に連絡。他患者の検査中とのことで少々待ち。脳外科にも連絡。その間、急性大動脈解離→脳虚血も疑い、エコーで出来る範囲で評価。心エコーで上行大動脈、大動脈弓、腹部大動脈に明らかなフラップなし。頚動脈エコーで総頚動脈にフラップなし。違うかな? そんな間に、徐々に麻痺が強くなり、左上下肢の麻痺が著明になってきて、構語障害も出現してきました。いそげー。
ようやく頭部CT撮影、病的所見なし、出血は認めませんでした。変な胸部症状があるだけに、大動脈解離の併発も十分に否定しておきたく、大血管CTも施行、解離はありませんでした。ちなみに肺塞栓もありませんでした。
虚血性脳卒中として、脳外科医に対応頂きました。

CT後幸いにも著明に神経症状が軽減し、結果的には、tPAは施行しませんでした。
胸部症状も知らないうちに治まっていました。

ところで、胸部症状はなんだったんでしょ?。わかりません。まぎらわしいです(苦笑)。

来院からCT撮影までに50分くらいかかってしまいました。初めから丁寧に診察していたらもうちょっと早かったかもしれません。普段、ほとんど心臓の患者しか診ていませんので、視野が狭くなってしまいます。心臓ばかりみているといけません。つねに全身を診る習慣を忘れないようにしないといけません。反省反省。

2 件のコメント:

  1. 貴重な症例ありがとうございます。

    脳外科医が最初から診ていたらすぐ診断できたかも知れませんし、逆に専門分野より胸の症状を重視してしまったかもしれませんし、、、、

    本当に臨床は難しいですね。ちなみに、解離で脳梗塞、、、、ほんの少し前まで知りませんでした。不勉強でした(+_+)。

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  2. Kim先生、有り難うございます。
    昨日は、A型解離で右総頚動脈に解離が及んでいる人が、左側の痙攣を一過性に生じました。脳虚血が関与したのかもしれません。

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