2009年9月30日水曜日

つまらないことですが。

そうそう、急に思い出したことがあります。
先日受講したACLS-EPコースの「コースの概要」の中で高カリウム血症の話が出てきて、高カリウム時の心電図と、改善後の心電図がスライドで提示されました。AHAが作ったスライドのはずです。ただ、その改善後の12誘導心電図が左右肢誘導(上肢)付け間違いだったような気がします。EPコース受講される方は是非確認して下さいね!(笑)。

2009年9月29日火曜日

体重とエネルギー量 小児と成人

Kim先生御指摘のように小児では電気的除細動もcardioversionも、体重でエネルギー量が決められています。CoSTRには「小児に対する除細動において、安全かつ有効な理想的エネルギー量は不明である、、、」旨書いてありますが、ある程度体重とショックの効果が相関するのでしょう。

考えてみれば、成人は身体の大きな人も、小さな人もエネルギー量は同じですね。
なぜ成人は小児と異なり体重あたりのエネルギー設定になっていないのでしょうか。

先に記載したように体重の重い人は効果が得られにくいし、軽い人は得られ易い傾向がある、とした研究(N Engl J Med 1974; 290:214.)もあるわけですが、一方で体重の増減との相関関係はあまり成り立たないとする研究も複数あるようです(Am J Cardiol 1983;52:739-45)(Circulation 1979;60:231-40.)。成人は一筋縄にはいかないんですね。
エネルギー量以外の因子の影響が小児より成人のほうが大きいのでしょうか。

2009年9月28日月曜日

体重とcardioversion

除細動やcardioversionの必要エネルギー量のはなし。体重の重い人は、軽い人よりも除細動されずらいし、必要エネルギー量は多くなる、とした研究があります(N Engl J Med 1974; 290:214.)。欧米は超肥満患者がVFやAFになるケースはいくらでもあるでしょうから、そのようなことを実感できる機会は多いのではないでしょうか。日本では実感ないですね。国技館のある両国近辺の病院なら相撲取りが搬入されてきて、実感するチャンスがあるかもしれません。都立墨東病院とか。ご存知の方は教えて下さい。
今日の千秋楽の朝青龍vs白鵬の本割、決定戦の2番があまりにしびれたもので思わず"肉体ネタ"でした。昨日のK-1アリスターオーフレイムも強かった。

2009年9月27日日曜日

昨日の写真

左冠動脈回旋枝へのPCI。ステントをデリバリーしていたところ病変通過せず。回収すべく抜いてきたらステントのみ冠動脈内に残り、バルーンのみ抜けてきました。恐らく石灰化を有する狭窄病変にステントが引っかかってしまったと推測されました。中途半端なところにステントが残ってしまったので回収すべく色々な手を尽くしましたが、変に引っかかってしまったためか大変苦労しました。結局スネア(デバイス回収に使用する、先端がループになったカテーテル)や子カテなどを使用して何とかステントを回収することができました。
写真は、ガイドワイヤーに乗ったステントにスネアを引っ掛けて3者一体(ステント、ガイドワイヤー、スネア)にようやく抜けてきた像です。ステントが原型をとどめぬほどびよよーんと伸びています。
最近はステントの性能が極めて良いですから、脱落することが滅多になくなりましたが、今回は無理な操作もしていないように見えました(術者は自分ではありませんでした)が、いとも簡単に脱落しました。やっぱり注意が必要なんですね。ちなみに脱落したのはDESのEです。印象良くないなあ、、E。

2009年9月26日土曜日

びよーん


クイズ。さて、これはなんでしょう。3cmくらいの長さです。

2009年9月25日金曜日

難治性心房細動へのcardioversion

頻脈性心房細動を発症し不安定な血行動態を呈している患者がいると仮定します。なんとか早期に洞調律に戻したいです。
しかしながら、単相性360Jでcardioversionを2度試みるも、洞調律に戻りません。どうしましょう。。。

色々と選択肢があると思われますが、こんな文献があります。

360Jのcardioversionで洞調律への復帰を2度失敗した心房細動患者に対し、除細動器を2台使用して720Jのcardioversionをかけたところ、84%の患者が洞調律に復し、かつ有意な合併症もなかった(JACC1999;34:2031-4)。10年も前の文献ですが。
こんな方法もあるんですね。ダブルライダーキックみたい(笑)。

2009年9月24日木曜日

みんな仲良く。

ACLS-EPコースに関して、少々ネガティブなことも書いてしまいましたが、自分としては結構好きです(笑)。ただ、一度のコース参加だけでは知識に関する理解も、コースに関する理解もまだまだ浅いです。自習しても効率は良くないですし、限界もあります。

ということで、今後もスタッフ参加させて頂き継続して勉強していければいいな、と思い、EPコース終了直後にCDの先生に相談させて頂きました。

「自分はJCS-ITCのインストラクターですが、協会のEPコースにスタッフ参加させて頂くことは可能でしょうか?」

CDの先生は御丁寧に御返答されました。

「自分の一存では決められませんので、また後日メールで御連絡致しますね!」

なかなか微妙です(苦笑)。皆さん良い人ばかりですが、組織になると難しい問題があるのでしょうか。あるのでしょうね(苦笑)。僕はよく分かりませんが。

メールが来るのか、来ないのか、密かに楽しみです、いろいろな意味で(笑)。


2009年9月23日水曜日

コメント

当ブログを時々でも御覧頂いている方々がそれなりにいらっしゃるようです。本当に有難うございます。
今更ながら、Googleのアカウントを持っていないと、このブログにコメント出来ないことに初めて気付きました(苦笑)。ブログ初心者なものですいません。
どなたもコメント可能なように設定を変えてみました。あたたかいコメント宜しくお願いいたします(笑)。

2009年9月22日火曜日

EPコースのちょっと印象的だったこと

ACLS-EPコース中に行った1人法CPR/AED成人スキルテスト。50歳前後の年配のインストラクターの方に担当頂きました。
自分としては、インストラクターマニュアルの"重要な手技の解説"に遵守した標準的な手技を当たり前のように行いました。手技が終わった直後にそのインストラクターの先生にフィードバックを頂きました。

「まあ良かったですけど、AEDの安全確認の時に『私離れています、あなた離れています、皆さん離れています、、、』と言った方が良かったですね。」
(自分は、身振り手振りを交えつつ『皆さんはなれて下さい!』と言った)

フィードバックの一言を聞いただけでもある程度インストラクターのレベルが想像できます。ああ、この程度のインストラクターでもEPコースでインストラクションするのか、、、と思い、(心の中で)苦笑しました。表面的には素直にそのフィードバックをお受けしました。

そのインストラクタ−の先生はどうやらEPコースのインストをめざしており、今回はモニターのようでした。その後EPコースのステーションも担当していましたが、案の定惨憺たる出来でした。受講生の質問に答えられないのは仕方ないとして、それをはぐらかしたり、また受講生の意見を頭ごなしに否定したり、ちょっと態度が横柄だったり、もう一度CICを受けた方がいいかもーって思いました(笑)。他にはすばらしいインストラクターの先生もいらっしゃっただけに、ちょっと残念でした。
AHAインストラクターといっても、その質は様々ですし、EPコースのインストラクターといっても、様々みたいです。

2009年9月21日月曜日

EPコースで ACLS Provider更新


AHA ACLS-EPコースを修了すると、ACLS provider資格も更新になるみたいです。
自分はAHA ACLSインストラクターですので、provider資格は必要ないのですが、インストラクター資格更新の際にproviderカードがあればちょっとは楽ですので助かります。

アメリカではACLSprovider資格更新率が低いようで問題視されているとお聞きしました。日本も同様かもしれません。
日本ACLS協会は、更新率を上げるという目的もかねてEPコース開催を企てているようです。

ただ、今回のACLS-EPコース修了でACLS provider更新できるというのはかなり問題と思いました。ACLS-EPコース中に、下記の3つを行うことで、更新とされます。

・ACLS providerコースの筆記試験
・1人法CPR/AED 成人スキルテスト
・メガコードのシナリオを用いた”メガチャット”

”メガチャット”なるものは、マネキンを使用した実技ではなく、small group discussion形式で、インストラクターが、メガコードのシナリオを提示し、受講生がその都度すべき手技を口頭で答えるといった感じのものです。
知識と、技術・実践は異なるものですし、仮に知識があっても実際に出来なければ意味はありません。口頭で言えても、出来る保証はまるでありません。そもそも、口頭でも答えられない受講生もいらっしゃいました。
こんなdiscussionでACLS provider資格が得られるということは、AHAの本意ではないと思います。勿論、このことはACLS EPコースのインストラクターの先生方も問題視しているようです。様々なジレンマがあり、一筋縄では行かない背景もあるようですが、今後改善すべき事項と思われます。

2009年9月20日日曜日

AHA ACLS EPコース

かなりな二日酔いの中(笑)、本日日本ACLS協会主催のAHA ACLS-EPコースを受講しました。ACLS-EPコースとは、ACLS providerコースの上位コースに位置づけられており、①もし心停止の原因が分かっていれば蘇生の管理方法が変わるのでは?②もし心停止になりつつある状態を予測でき、その原因が分かれば未然に防げるのでは?という2つのコンセプトのもと、これらの転帰を改善させる方法を学ぶ、、とされています。
心不全やショックを伴ったSTEMIの対処や、NSTEMIの対処、電解質異常、低体温、致死的喘息、アナフィラキシー、中毒、溺水、妊婦のCPRなどを学びます。
自分の専門外の分野が多く、大変勉強になりました。結論としてはコースを受講して良かったです。コース開催にこぎつけた日本ACLS協会、インストラクターの先生方には感謝致します。御苦労も多いのではないかと推測致します。
ただ、一番良かったのは、このコース受講のために事前に自分でそれなりに勉強したことです。コース自体は、自分で勉強したことの確認程度のものかもしれません。はっきり言えば、たいしたコースではありません(笑)。事前の勉強で疑問に思ったことをいろいろと質問させて頂きましたが、大変丁寧に対応頂きましたが、解決したこと、しなかったこと、様々です。エビデンスなど乏しい事項が多いですから、やむをえないですね。
細かいことはまたアップしたいと思います。
お話する時間は残念ながらなかったのですが、Kim先生にもご挨拶することができました。よかったです。

2009年9月18日金曜日

妊婦のVF

VFになった妊婦に電気的除細動を行う際は、通常通りの方法でよろしいようです。除細動のショックは胎児へ有意な電流を及ぼさないようです。何故なんでしょうか。

除細動の時に「離れてください!」なんて安全確認していますが、少し触れていることの方が、胎内に収まっていることより危ないのでしょうか?

電気の知識をしっかり持っていたら、当たり前の理屈なのかもしれません。

ちなみに、胎児が胎内でVFになっちゃったらどうするんだろう。

分からないことだらけで、楽しいです(笑)。

2009年9月17日木曜日

妊婦のBLS

自分はBLSインストラクターのはずなのですが、知らないことがまだまだあります(苦笑)。
今日は妊婦のBLSを学びました。

・体位は左側臥位から15-30度後方に傾ける感じで、右側を上げておく。
(子宮が下大静脈や大動脈を圧迫しないため。)
・人工呼吸の際は(人手があれば)輪状軟骨圧迫法を持続的に行う。
(ホルモンの影響で胃食道括約筋機能が低下しているため逆流リスクが通常より高い。)
・胸骨圧迫は,胸骨中心よりやや上の通常より高い位置で行う。
(子宮により横隔膜と腹部臓器が上方に押し上げられている影響を調整するため。)


ちなみに、胸骨圧迫の位置をどのくらい上にずらすかはデータはないようです。胸骨圧迫の間に、脈拍触知をして圧迫ポイントを調節する(ACLS Resource Text P362)そうです。へー。


2009年9月16日水曜日

ペースメーカー植え込み患者へのcardioversionの際に

昨日の話と一部重複しますが、その文献によるとペースメーカー植え込み患者にcardioversionを施す際の推奨事項は以下のごとくだそうです。

cardioversion前
・ペースメーカーとリードの機能をチェックする
・outputを上げておく
・VOOまたはAOOにしておく

cardioversion中
・除細動パドルはジェネレーターから15cm離す
・パドルは前胸部−側胸部か、前胸部−背部に位置させリードと直交させる
・複数回のショックが必要な場合は、保護ダイオードを冷やすためショックとショックの間は少なくとも5分はおく。
cardioversion後
・ペースメーカーとリードの機能をcardioversion直後にチェックする
・4−6週間はより高いoutputに設定しておく
・4-6週間後にペースメーカーとリードの機能をチェックする
・pacing閾値、sensing閾値が上昇した場合、早期のチェックを推奨する
・機能不全を生じた場合は、ジェネレーター、リード交換を検討する


2009年9月15日火曜日

cardioversionのペースメーカーへの影響

ペースメーカー植込み患者に対するcardioversion。
ペースメーカーへの影響について、あまり深く考えたことはなかったのですが、ちょっと調べてみると結構興味深いです。
ペースメーカーへの悪影響はいくつかの機序があるようです。
cardioversionの電流がリードを通っても、最近は保護ダイオードなるものがジェネレーターを守ってくれるそうです。しかし、その分心筋側の電極にエネルギーが集中し、心筋外傷や熱傷が生じ得るようです。リード自体にも悪影響を来たすこともあり、これらによりペーシング閾値が上昇することがあります。cardioversion直後は問題なくとも、数日後に閾値が上昇したりすることもあるようで、時間をおいた後の閾値再チェックも推奨されています。

保護ダイオードがダメージを受けることもあります。ショックとショックの間は時間を開けて(例えば5分以上)、保護ダイオードを冷やし、ダメージを生じさせないことが望ましいとのこと。保護ダイオードが障害を生じることで、或いはそうでなくともジェネレーター本体に障害を来すことも当然あります。プログラムがダメになり、再プログラミングも不能になった例もあるようです。

ペースメーカーに依存している患者さんの場合は特に注意が必要です。
ずいぶん昔の文献ですが、ペースメーカー植え込み患者へのcardioversionにおいて、ペースメーカーへの悪影響で死亡に至ったcase reportもあるみたいです(Pacing Clin Electrophysiol 1979;2:462–464.)。こわいこわい。
不安定な病態でなければ、ペースメーカー植え込み患者に対しては薬物的cardioversionがよいのかもしれません。

2009年9月14日月曜日

除細動のショックの方向とペースメーカーリード

BLSコースで、「ペースメーカー植え込み患者に対し、AEDパッドは、ショックの方向がペースメーカーリードと垂直になるように前後に貼ると良い、と学会で聞いたが、そのように貼らなくてよいのか?」と受講生から質問がありました。

ACLS Resource Textに参考になる記載があります。ペースメーカー植え込み患者の心房細動に対するcardioversionの研究です(Eur Heart J 2007;28:1731-8)。
「パッドを前胸部と背部に貼り、前胸部のパッドはペースメーカーから8cm以上離して貼る。
このように貼ることで、電極はペースメーカーから十分に離れているし、かつ、ショックの方向がペースメーカーリードと垂直方向になる。この状態で、二相性100-200J、単相性200-360Jでショックをかけたが、ペースメーカー本体もリードも不具合を生じた例はなかった。」
この記載を根拠に、「ペースメーカーへのダメージの可能性を最小限にするために、可能なら、前後(前胸部と背部)にパッドを貼ることが望ましい。しかし、前後に貼ることにより除細動が遅れるべきではない」としています。

ショックが流れる方向と、ペースメーカーリードの方向が平行になっていると、リードに流れる電流が大きくなりリード自体もしくはペースメーカー本体にダメージを来し易いようです。
リードの走行を考えると、リードと垂直になるためには前後に貼る方法が最も確実と言えます。
受講生の疑問ももっともです。ただ、心肺停止の傷病者の背中にパッドを貼ることは、手間がかかり除細動のタイミングが遅れたり、胸骨圧迫の中断時間が長くなる可能性が極めて高いですから、VFへの除細動時には、原則的には考慮しなくてよいのではないかと思います。

受講生の質問に対しての回答は、「ペースメーカーへのダメージを最小限にするためには前後に貼ることが望ましいようですが、心肺停止の傷病者の背中にパッドを貼ることは、除細動が遅れたり、胸骨圧迫中断時間が長くなる可能性が極めて高いですから、通常のパッドの位置に準じた位置に貼って、迅速な除細動を優先してください。ただしペースメーカーからは2.5cm以上離してください。」が妥当なところでしょう。

2009年9月13日日曜日

乳児の反応確認

今週末はBLS、BLS-Rでした。
また苦手の乳児です。
乳児の反応の確認の際、なぜ足への刺激が推奨されているのでしょうか。根拠となる文献等はあるのでしょうか。成人と同様に肩等を軽く叩いたらいけないのでしょうか。ご存知の方は是非教えてください。
以前も反省会で話題になったことがあったような気がしますが、結論を忘れました。

2009年9月11日金曜日

片貝花火

今年は片貝花火に行けなくて、残念でした。
一発、一発に気持ちがこもった、花火。大好きです。
都会の花火大会とはひと味もふた味も違います。。。来年は是非行きたいです。




2009年9月10日木曜日

三環系抗うつ薬過量服薬による心肺停止

奇遇にもKim先生同様、僕も近々ACLS-EPコースを受講予定です。
そのテキストであるACLS Resource Textを苦手な英語で読んでいるのですが、自分にとっては未知の世界の「中毒」の所を見て、へえと思いました。
三環系抗うつ薬(TCA)の過量服薬で心肺停止になった時は、アルカローシスにするために過換気を行う、と記載されています。
ご存知の通り、G2005 の最重要項目の一つは”過換気を避ける”です。「救助者は過換気を行ってはならない。過剰な換気は胸腔内圧を上昇させ、心臓への静脈還流を減少して心拍出量を減らし、生存率を低下させるため、不必要であり有害である」とかなり強調されています。
TCA中毒による心肺停止においては、心拍出量の低下を犠牲にしてまでも、アルカローシスにすることが重要である、ということなんでしょうか。H's and T'sを是正しないと心肺停止からの脱却は確かに難しいのは理解できますが。。。うーん。EPコースで質問してみようかな。

2009年9月9日水曜日

経時的心電図変化

STEMIのガイドラインでは急性冠症候群(ACS)を疑う患者が救急外来に来たら10分以内に12誘導心電図を記録するのはクラス1の推奨です。

しかし、その心電図で診断がつかない場合も少なくありません。

そんなとき、循環器医としてはすぐさま心エコーで壁運動異常を評価するものと思います。しかし非循環器医としては、なかなか難しいかもしれません。

ACLS Resource Textには、「もし初めの心電図で診断がつかない場合は、経時的心電図記録を推奨する。心電図再検のタイミングを決める必要があるが、少なくとも初めの心電図から1時間以内には再検しなければならない。患者の症状が持続している場合や、臨床的にSTEMIを強く疑う場合は5−10分以内に再検せよ。」とあります。


昨日のケース(STEMIのふとした疑問)

初めの心電図でST上昇していると思いましたが、症状は消失しているし、心エコーで明らかな壁運動異常は認めませんでしたので、リスクは高くないと思いのんびり対処してしまい、経時的心電図記録は少々遅れてしまいました。提示されている経時的心電図は初めの心電図から30分後のものです。

ST上昇も軽減し、T波終末陰転化も認めますし、まさに経時的変化ありです。症状と合わせて考えれば、心筋虚血を来していた可能性は極めて高いと判断できます。

心エコー等せずに、さっさと5分後に経時的心電図を記録していれば次なるアクションはもう少し早かったかもしれません。

まあ、このケースは緊急カテせずとも、予後は変わらないでしょうが。



研修医や非循環器医の先生方も、経時的心電図の重要性を理解している方は少なくありませんが、症状が残存している時でもそのタイミングが遅いことが多いと感じています。

5−10分後の再検をこころがけましょうねん。


2009年9月8日火曜日

STEMIのふとした疑問

胸痛を主訴に救急搬入された高齢男性。救急外来搬入直後に素早く12誘導心電図を記録したところV1-2でST上昇を認めます。しかしながら胸痛は心電図記録直前に自然消失。


症状消失しているけど、STEMIかな?と思い、心電図記録直後(ほぼ同時)に心エコーを当ててみたら、左室収縮は良好で、明らかな壁運動異常は認めませんでした。あれ。早期再分極?

エコー後にもう一度12誘導心電図を記録したらST上昇は軽減していました。


T波終末の陰転も認めるし一過性虚血を生じていた可能性は極めて高いとして、結局冠動脈造影を施行。左冠動脈前下行枝にACSを疑う99%狭窄病変を認め、PCI施行致しました。

心電図ではST上昇していたものの、ほぼ同時に行った心エコーでは左室収縮能は正常でした。
冠動脈が閉塞すると、①血流低下②心室機能低下(拡張能→収縮能)③心電図ST変化 ④胸痛 の順番で変化を生じるといいます。
冠動脈が再灌流すると、どんな順番で上記所見は解消されていくのでしょうか。何となく④→③→②の順かと思っていましたが、違うのかな?ST上昇が残存していても左室収縮が正常化することはありえるのでしょうか。
なんか、釈然としません。どなたか教えてください(笑)。

2009年9月7日月曜日

まあ、いろいろってことで。

Cardioversionにおける抗不整脈薬の役割で、多くの抗不整脈薬はcardioversionの閾値を上げると記載しました。Flecainide(タンボコール)も上げると書いたのですが、この文献(J Am Coll Cardiol 1999;33:333-41.)では、internal cardioversionではありますが、Flecainide(タンボコール)静注は心房細動のcardioversionの閾値を下げたと書いてあります。
Sotalol静注も閾値を下げるそうです(Pacing Clin Electrophysiol 1997;20:2442-52.)。
まあ、いろいろですね。

2009年9月5日土曜日

上室性頻拍の対処法

山下武志先生「不整脈で困ったら」(メディカルサイエンス社)もなかなか興味深い本で、非循環器医の方には特にお勧めです。


この本の上室性頻拍(PSVT)を停止させる方法についてちょっと興味深い記載がありました。
「昔の教科書を紐解くと、眼球圧迫とか頚動脈マッサージとか恐ろしげな方法が書いてありますが、いまやそんな方法はとりません。」と記載あり、山下先生の今現在の方法としては、「インデラル20mgとワソラン80mgを一度に頓服として服用してもらい、外来待合室で30分程待機してもらいます。(中略)精神的に落ち着いている患者ならかなりの確率で自然停止します。停止しなかった場合には、洗面器に水を入れてその中に息ごらえをしながら顔をつけてもらうと、更に停止しやすくなります。」そして、アデホスなどの静注による対処は”最後の砦”と位置づけています。

AHAの推奨とはずいぶん異なりますね。

眼球圧迫が恐ろしげな方法であることは良いとして、頚動脈洞マッサージも今や恐ろしげな方法みたいです。確かに、動脈硬化素因のある患者に対しては”恐ろしげ”な方法であることは間違いありません。山下先生にとっての優先すべき迷走神経刺激手技は息こらえと顔浸のようです。安全性が高いので、基本的には僕も賛成です。

PSVTに対する単回経口療法(Pill in the Pocket)として、ヘルベッサー120mg+インデラル80mgという組み合わせが、ACC/AHA/ESCの上室性頻拍のガイドラインに引用されていましたが、海外での用量であり、日本人に使用するには多すぎると思われ、試したことはありませんでした。上記山下先生推奨の用量は大変参考になります。機会があれば試してみようと思います。

AHAが全てではありませんし、いろいろなオプションを持っていることは良いことだと思います。

ただ、上室性頻拍に対する自分としての対処法は、AHA推奨通り、迷走神経刺激→アデホスが原則です( 笑)。

2009年9月4日金曜日

またTCP

嘔気、めまいで来院した中年男性。内科対応。来院時は血圧140/、脈拍60台だったそうです。頭部CT等施行し問題なかったようですが、その後心電図を記録したところ、びっくり。
循環器科依頼。循環器後期研修医対応。
PEAか?というほどの激しい(?)心電図ですが、意識朦朧も、脈拍触知はできており、とりあえずTCPを装着、作動させたそうです。ペーシングの刺激のせいか、TCPによる脈拍上昇のせいか、意識も清明となり、カテ室に搬送し、頚静脈ペーシングを挿入しました。TCPを使ってくれたのはいつもの後期研修医(笑)です。もうTCPはお手の物です。

徐脈の原因は、虚血性心疾患患者であること、β遮断薬を内服していたこと、CKDに起因する高カリウム血症もあり、複数の要素が関与していそうです。

慌ててTCPを装着した後期研修医に対し、「循環器医ならこの程度の徐脈ごときに驚くな。」とのプロフェッショナル循環器専門医のフィードバックもありました。。。。。すごい。僕は、こんな心電図目の当たりにしたら驚いちゃいます。

2009年9月3日木曜日

adenosineの使用経験

上室性頻拍に対するadensine使用に関する文献(Am J Emerg Med. 2008;26:879-82.)。abstractのみしか読んでません(汗)。
救急外来において、5年間で約500人の上室性頻拍患者にadenosineをボーラス静注を行っています。頻拍の平均心拍数は162bpm。adenosine6mgの投与で73%の患者が反応し、15%の患者が12mgの追加投与に反応しました。11%は更に12mgの追加投与で反応しました。11%は反応がなかったとのこと(あれ?合わないですね??)。
軽度の副作用は高率に生じ、胸部不快83%、顔面紅潮39%、死にそうな感覚7%(苦笑)。1例のみ重篤な副作用が生じたとのこと。12mg投与により房室伝導が1:1になり、心房粗動(未診断だった)の心室レートが著明に促進されたとのこと。

予期せぬ重篤な副作用は1/500ってところですかね。

2009年9月2日水曜日

上室性頻拍と突然死

古い文献(JACC1991;18:1711-9)ですが、突然死から救命された290人のうち、13人(4.5%)が、上室性頻拍から心室細動に陥ったのを目撃された、或いはそれを強く疑われた例だったそうです。

13人のうち5人が副伝導路と心房細動を有しており、1人が副伝導路とAVRT(房室回帰性頻拍)を有しており、各々心室細動に至ったとのこと。
3人はAVNRT(房室結節回帰性頻拍)、4人は心房細動で、各々発作時に房室伝導が促進され心室細動に至った。

AHA ACLSメガコードケースBの規則的で狭いQRS幅の安定した頻拍患者がその後心室細動に移行するというシナリオ。以前も病態の推測を書きましたが、上記文献からすると、確率的には4/290=1.4%(心房細動を除いた)とやっぱり稀なケースですね。

2009年9月1日火曜日

今日もTCP

糖原病の若年男性。失神を主訴に救急搬送。診察室でも間欠的に高度房室ブロックが散見され、目の前で失神。素早くTCPを装着、作動し、事なきを得、経静脈ペーシングを挿入したそうです。
先日TCPの扱いが今ひとつだった、後期研修医。今回はばっちりでした、と満足そうでした。
やはり基本を学んだ上で、現場で手技を重ねることが上達への近道です。

糖原病、、国試以来久々に聞いた言葉です。。。。要勉強。

先日、強皮症に合併した高度房室ブロックもいました。。。要勉強。

全身疾患の一症状としての不整脈も少なくありません。