2009年7月19日日曜日

電気的除細動による心筋マーカー上昇

電気的除細動やCardioversionといったショック治療の結果、心筋壊死を生じることはあり得ることのようです。ショックを繰り返すことでも心筋ダメージを来すかもしれないが、ショックの回数よりも各ショックのエネルギー量の影響が大きいそうです。
ショック後にトロポニンTやトロポニンIが僅かながら上昇したとする文献はあります(Am J Cardiol 1997 ;80:1367.)が、38人に平均300Jのショックを行い、3人のみにわずかな上昇を認めた、程度のことのようです。
他方、平均400Jでのショックを試みた72例ではトロポニンTやトロポニンIといった心筋マーカーは上昇しなかったとする文献もあります(Eur Heart J 2000;21:245.)し、その他にもトロポニンTが上昇しなかったという文献がいくつかあるようです(Am J Cardiol 1986;57:120.,Am J Cardiol 1988;62:1202.)。従って、除細動やcardioversion後に著明にTnTやTnIが上昇した場合は、ショック治療以外に原因があると考えてよさそうです。僅かなCKMB上昇を呈することはありますが、これは心臓由来でなく骨格筋由来である可能性が高く、心筋障害の証拠にはならないとされます。

以上のように、ショック治療により大きな心筋ダメージは呈することはなさそうですが、それでも心筋ダメージを最小限にするためにショックとショックの間は少なくとも1分はあけるように推奨する者もいるそうです、ずいぶん古い文献ですが(Circulation 1974;50:956–61.)AHA/ACC/ESCの心房細動のガイドラインに引用されていました。

【まとめ】
電気的除細動やCardioversionで心筋壊死が生じることはあり得るが、頻度は低く、傷害の程度はあったとしてもごく僅かである。現場ではあまり神経質に考慮する必要はないが、ショックのエネルギー量は必要最小限にすることが望ましい。

参考:
Up To Date

ACC/AHA/ESC 2006 Guidelines for the Management of Patients With Atrial Fibrillation

2 件のコメント:

  1. いつも為になる記事をありがとうございます。

    実は週末の講習会で同期カルディオバージョンは間隔をどれぐらいあけるべきなのかと質問を受けたばかりだったのでした。この記事読んでおくんだった!!

    ショックしたら、脈拍チェック、血圧測定、その他色々で1分から2分ぐらいはたっちゃいますよね〜と答えさせて頂きました。

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  2. 有り難うございます。
    ショックの間を1分あける、というのは、心房細動ガイドラインの文中に、そのように主張している文献があるという記載があるだけで、AHAとして推奨しているわけではありません。念のため。
    受講生の質問に対しては、kekimura99さんのような対応でよいと、僕も思います。

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