2009年7月1日水曜日

AS+AF 不安定頻拍



高齢女性。以前より中等度〜重度の大動脈弁狭窄症を指摘されていましたが、弁置換術といった外科的治療は拒まれていた方です。重度の大動脈弁狭窄症は様々な心疾患の中でも最もリスクの高い疾患の一つと考えられ、突然死の代表的疾患としても知られています。今回消化器的な問題で入院中にHR160bpmほどの頻脈性心房細動発作を生じました。心房細動は著しい頻脈になり易く、かつ心房と心室の相互作用が欠如しますので心拍出の効率が低下します。そのため、いつも100mmHg/以上ある血圧は70mmHg/ほどとなり、ショック状態になりました。
ACLSコースで言う不安定頻拍です。すぐさま循環器科にコンサルテーションが来ました。循環器科の後期研修医が迷いなく同期下電気的カルディオバージョンを行ってくれました。プロポフォールで鎮静し、二相性除細動器100Jで教科書通りの手技です。一発で洞調律に戻り、血圧も回復しました。

一般的には心房細動ごときで不安定頻拍になることは少ないですが、このように重症基礎心疾患があれば容易に不安定化しますし、迅速に対処しないと致死的事態に陥ってしまうことも稀ではありません。今回の処置も施行してしまえばなんてことのないことなのですが、大変重要な対処だと思っています。高齢化社会で、大動脈弁狭窄症+心房細動の不安定頻拍って結構遭遇しますね。
ACLSは難治性心肺停止への処置のみならず、心肺停止への移行の阻止においても重要な役割を果たしていることを理解して頂ければと、いつも思っています。

4 件のコメント:

  1. 心房細動で不安定になる事はあまりないのですね、、、、

    実際に患者さんを診療する事が少ないので勉強になりました。

    そしてやはり不安定なら同期電気ショックですね!!

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  2. kekimura99さん、有り難うございます。
    そうですね。頻脈性心房細動で心不全になって来院する人(特に高齢者)は多いですが、不安定頻拍となって来院するひとはあまり多くないと思います。

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  3. 誤解を招く表現かとも思いましたので、少々追加させてください。
    心不全を伴う頻拍ですと、ACLS的には不安定頻拍と判断することになりますが、通常心不全になって来院する頻脈性心房細動は48時間以上持続していることが多いので、cardioversionを緊急で行うことは塞栓症リスクにつながりますし行わずに対処することがほとんどです。通常、心室応答コントロールと利尿剤等の普通の心不全治療で対処できます。

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  4. リハ科の医師です。宜しくお願い致します。
    60代の男性でp-afあり、メインテートを服用されています。CCBや亜硝酸剤の服用無し。下肢筋力低下のため、歩行訓練後に胸部不快感あり、HR150程度の頻脈性afで、意識清明も血圧80程度。持参のサンリズム1錠内服するも洞調律に戻らず。このときⅠ、Ⅱ誘導でのみSTが低下あり、ニトロ舌下するも胸部不快感変わらず。結局デイケアから病院に搬送してワソランivで洞調律に戻ったそうです。以前からVSAといわれ、CAGは異常無し。この、STの低下は何を意味するのでしょうか。コメントをいただければ幸いです。

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