2009年5月20日水曜日

心停止アルゴリズムにおける薬剤投与タイミング







思い込みとは、怖いです。
とあるMLで議論が交わされ、AHA ACLSの心停止アルゴリズムの薬剤投与方法で今更ながら自分の考え違いに気づいて、認識を新たにしています。例えばエピネフリンは、1度目もしくは2度目のショックの後に投与し、以降は3-5分毎に投与する訳ですが、かつリズムチェックの後出来る限り速やかに投与する、との記載もあります。このリズムチェック後投与という記載が、なぜか頭から抜けていました。我々の周辺では単に3−5分毎に投与とする指導が主流であった気がします。
以下、今現在の個人的な結論です。

薬剤(例えばエピネフリン)投与において、「単に3-5分毎」が原則であり、「3-5分の原則を守りつつリズムチェック後速やかに薬剤を投与する」は時により実践的であり、オプションとして十分考えうる、と理解していたことは、自分の思い込みであった。
「3-5分の原則を守りつつリズムチェック後速やかに薬剤を投与する」がAHA ACLSプロバイダーマニュアルの示すアルゴリズムであり、これを指導することが原則(理想)である。

なお、「3-5分毎投与」はAHAガイドライン2005、ACLS Resource Textに記載はありますが、CoSTRには記載がありません。「リズムチェック後投与」はAHAガイドライン2005に記載はありますが、ACLS Resource Text、CoSTRには記載がありません。
また、AHAガイドライン2005(日本語版) P80 3-5分ごとにアドレナリン1mgを静脈内/骨髄内投与することが適切である(クラスIIb)、同P81 心停止に対するアトロピンの推奨容量は1mg IVであるが、心静止が持続する場合は、これを3−5分ごとに(最高3回或は総投与量3mgまで)反復投与できる(クラス未確定) と「3−5分毎」に関わるエビデンスレベルの記載があります。
「3-5分毎投与」はあまり根拠はなく、エビデンスレベルも低い、あくまでも専門家のコンセンサスです。

「3-5分の原則を守りつつリズムチェック後速やかに薬剤を投与する」を受講生に伝えることは易しくはないためか、インストラクターや受講生により、「3−5分毎投与」のみで指導していたり、「リズムチェック後投与」のみで指導している例もありますが、「3−5分毎投与」が「リズムチェック後投与」に勝る原則であるという根拠はありませんし、「3−5分毎投与」を優先して「リズムチェック後投与」投与に反すること、或は「リズムチェック後投与」を優先して「3−5分毎投与」に反すること、これら双方の優劣もはっきりしません。どちらかが許容され、どちらかが許容されない、ということも言えません。
双方を守る、「3-5分の原則を守りつつリズムチェック後速やかに薬剤を投与する」がやはり原則と考えざるを得ません。どのように受講生に易しく伝えるか、悩みどころです。

しかししかし、最大の大原則は、薬剤そのものに確たるエビデンスはなく、もちろんその投与タイミングにもエビデンスはなく、大して重要ではありません。このことはAHAガイドライン2005にも明記されています。ぶっちゃけ、どんな投与法でもHigh Quality CPRや早期除細動をしてくれていれば良く、インストラクションにもこの原則を抑えた上でのバリエーションがあって良い訳ですが、やはりAHAインストラクターとしては指導のスタンダードを抑えておきたく、ここ数日、悩んでいるわけです。

3 件のコメント:

  1. 全く考えた事がなく勉強になりました。ヨーロッパ蘇生協議会のガイドラインでは電気ショックの直前にアドレナリン投与となっているようですね。

    色々面白いです。

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  2. Kekimura99さん、コメント有り難うございます。僕はERCのガイドラインはあまり読んでいないので、AHAに偏ることなく視野を広げたいと思います。貴重な御意見有り難うございました。

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  3. 個人的には、アルゴリズムがもたらす投与量は「アドレナリンの大量投与は転帰を不良にする」と矛盾している気がしてならなくて、本当に最適なアルゴリズムの研究って大切ではないかと思っていて、先生の「ぶっちゃけ」の文章に共感いたしました。

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