2009年2月21日土曜日

電気的除細動 パッドとパドル

これも昨年の話です。


特に既往のない40歳代男性が気分不良、動悸を主訴に救急外来を独歩受診されました。血圧95/50ほど。心電図はwide QRS tachycardia(単形性)、心拍数250bpmほどでした。ACLSプロバイダーとしてではなく、循環器医として、ためしにアデホスATP 1020mg)を使用してみましたが全く反応がなく、VTの可能性が極めて高いと考えました。血圧が70/ほどと下がってきたため除細動パッドを装着し、鎮静下で同期下電気cardioversionを行いました。100J(二相性)で一瞬洞調律に回復しましたが、すぐにまた再発しました。易再発性VTであり、救急外来から救命センターに移動し、処置を続けました。再発予防として、アミオダロン125mg10分で点滴しました。VTは依然持続していましたので、再度同期下電気的cardioversion100J(二相性)で行いましたが、今度は停止しなくなりました。150J(二相性)で再度試みましたが、停止しません。200J(二相性)まで上げましたが、やはり停止しませんでした。アミオダロンで除細動閾値が上昇したのかもしれません。また、鎮静薬、アミオダロンなどの影響か、血圧も

50-60/ほどと低めを推移し、かなり焦りました。パッドをはがし、パドルに変更し、パドルを胸郭に強く、しっかりと押しつけるよう200J(二相性)でかけたところ、ようやく洞調律に回復しました。再発もせず、血圧も回復し、ひと安心でした。基礎心疾患は明らかでなく、右室流出路起源の特発性VTの可能性が高いと思われました。

いろいろ学ぶべきことがあった事例なのですが、ひとつはパッドとパドルの問題で

す。今回のケースでは、パッドによるショックより、パドルによるショックのほうが効果

が高かった、という印象を持ちました。ACLSプロバイダーマニュアル(P45)には”パッドとパドルの優位性は明らかでないが、パッドはアーク放電のリスクが減り、モニタリングにも利用でき、必要に応じ素早くショックもできるので、パドルよりもパッドのほうが推奨されるのが普通”と記載されています。CoSTRにも、パドルもパッドも効果は同程度で、パッドのほうが使い勝手がよい、、というニュアンスで記載されています。

また、パッド使用のショックにおいて、手袋をしていれば患者に触れていても感電リスクが低く、胸骨圧迫中断なくショックすることも可能といったガイドラインを揺るがすような、びっくりする文献(http://circ.ahajournals.org/cgi/content/abstract/117/19/2510)もありますし、今後もパッド使用が推奨されていく方向性は間違いないものと思われます。

 

しかし、パッドと比較するとパドルを8kgという最適な力で押し当てた場合、低い胸郭インピーダンスを示したという前向き比較研究(Br J Anaesth.1998;81:657-658.)、心房細動に対するCardioversionにおいて、パッドよりパドルのほうがわずかに成功率が高かったという文献(Eur Heart J. 2005Jul;26(13):1292-7.)なんかもあるようで(いずれもCoSTRにも引用されている)、パドルのほうがパッドよりもショックの効果としては高い、という意見もあるわけです。UP TO DATEを見てみると、後者の文献を理由にパドルのほうが効果的かも、、、と記載されています。

Hand-held versus patch - The use of hand-held paddle electrodes may be more effective than self-adhesive patch electrodes. This was illustrated in a randomized trial of 201 patients referred for cardioversion for persistent AF . Success rates were slightly higher for patients assigned to paddle electrodes (96 versus 88 percent with patch electrodes). Improved electrode-to-skin contact and reduced transthoracic impedance with hand-held electrodes may explain the benefit.

これら文献の原文は読んでいません。

使い勝手がよく、パッド使用を推奨する姿勢には全く異論なく、今後僕自身もパッドを積極的に使用していきますが、パッドでどうしても除細動できないときに、パドルに変更するというオプションは頭にいれておいてよいかなと思います。

 

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